「きゃっ。」

出会いは突然。
それは放課後、榊監督に今日の予定をお伺いに職員室へ寄った帰りに起きた。



   何だイツは?

                【アトベケイゴ6つによるお題による連載。】
     












俺の目の前でイキナリ躓いて転んだ女。
別に石ころが転がっていた訳でも、バナナの皮が落ちていた訳でも無い。
何故ならばここは、校舎の中の何の変哲もない廊下だからだ。
更に付け加えれば、誰かとぶつかって弾き飛んだ訳でも無い。
何でこんな何も無い所で転べるのか不思議でもあるが、そんな事はどうでもいい。
それよりもそこで今だ呻ったままの女は、自分がどんな格好で転んでいるのか自覚があるのか問いたい。

「うぅーーー。」

流石にいつまでもそのままは、いかがなものかと思って俺は声をかけた。

「おい、そこの躓いて転んでる女。」

「・・・えっ?」

その女は顔を声のする方をチラッと見た。

「お前、いつまでそんな格好のままうつ伏せになってるんだ?」

「ちょっと痛くてですね、痛みが引いてから起き上がろうかと思いまして・・・。」

自分の格好に全く気がついていない様子だ。

「お前早く起き上がった方がいいぞ。・・・見えてる。」

「えっ?なんですと?」

「だからパンツが見えてるんだよ。」

「えっ?えっ?よく聞こえません。」

この馬鹿女め。
思わず声を張上げて言ってしまおうかと思ったが、それは流石に可哀相だと思い止めた。(何て心優しい俺)

「ハァ。」

しかた無しに俺はしゃがみ、その女の前に回りこんで両脇に手を差し入れて座らせた。

「あっ、すいません。で、何て言ってたんですか?」

「スカートがおもいっきり捲くれ上がってモロパンツ丸出し状態だったんだよ。」

「・・・・・・・、ぎゃー。」

余りにもデカ過ぎる叫び声に耳の鼓膜が破れるかと思った。

「ぅるせよ!!」

「ず・ずみ゛ま゛ぜん゛。」
(パンツ見られた!?ぎゃー何やってるの!!馬鹿馬鹿、超恥ずかしいー。ドジ過ぎる。)

見るみる内に面白い程に顔が真っ赤になっていく。

「うーーー。」
(今日どんなパンツ穿いてたっけ?・・・真っ白にフリフリレースが付いたお気に入りパンツだ。あー良かった変なの穿いてなくて。これで変なパンツ穿いてたらもう学校に
来れないよぉー。セーフ今日はセーフ。)


何かまた呻っている様だが、いつまでもここで時間を潰している訳にも行かない。
そろそろ部活に行かなければならない。

「おい。」

「は、はい。」

「俺はそろそろ部活の時間だ。いつまでもそこに座ってないで早く帰れよ。」
俺は立ち上がり「じゃぁな。」とその場を去ろうとした。

っつう・・・痛い。」

その女もその場を離れようと立ち上がった時だった。
立ち上がる前に顔を顰めて、再度廊下に座り込んだ。

「チッ。」

面倒な事に関わっちまったな。
さすがに声をかけた手前、このまま無視をして行く事も出来ない。
俺は仕方無しにポケットから携帯を出すとボタンを押した。

「・・・・もしもし、あぁ俺だ。部活に少し遅れる。」
「・・・あぁ、・・あぁ、そうだ。」
「いつも通りのメニューを時間通り始めてろ。」
「・・・サボって無いでちゃんとヤレよ、・・いいな。」

電話を切ると再び、その女の前にしゃがみ込んだ。

「おい、お前。しょーがねぇから連れてってやるよ。」

そう言うと俺は、その女の横に回り所謂お姫様だっこっつやつをしてやった。
その途端、

ぎゃーーーー。」

今度はかなり耳元で大声を上げやがった。
耳の奥がキーンと鳴っている。
よく落とさなかった自分を誉めてやりたい。

「てぇめー、さっきから人の耳元で大声上げて人にケンカ売ってんのかよ!」

「す・すみません。」

「次、大声上げたら落とすからな!!」

「・・はい。」

「ったく・・・。」



    



保健室の目の前に着いて、その女に声をかけてドアを開けさせようとした瞬間、タイミングよくドアが開いた。
中から出てきたのは、自称20歳の保険医。(どうみても軽く30代半ば過ぎている)

「あら、さんに・・跡部君。不思議な組み合わせね。」

頬に手を当て微かに首を傾げる保険医。

「ちなみにさん、あなたまたどこか怪我したの?」

どうやらこの女、と言う女はここの常連らしい・・・。

「今度はどうしたのかしら?」

「・・転んで足を捻ったみたいで。」

「あらそう・・・困ったわぁ、これから至急の用事があるのよ。」

『おぃ、どうしましょう?』とか言ってる場合じゃねぇーだろう。
何か嫌な予感がする・・・。

「あっそうだ、跡部君。」

「何でしょうか?」

「貴方、捻挫の手当て出来るわよね。お願いしていいかしら。」

お願いであって、お願いしてねぇーよな。
これは最早、決定事項か。

「解りました。」

「じゃぁ、お願いね。」

そそくさと去っていく。

「ハァ・・・。」

「あ・あの〜、ごめんなさい。」

「あっ?」

「何から何まで迷惑をかけっ放しで。」

まったくな!
そのまま保健室へと入った。
取りあえず、を降ろして椅子に座るよう促した。
一応規則となっている保健室利用名簿を手に取り、に渡した。
そう言えば、こいつ学年はどこだ?
今、降ろした時、余りにもちっちゃくてビックリした。
軽い訳だ・・・。
顔は別に幼い顔立ちでは無いが、身長的に見ると1年・・・か?
俺の胸元ぐらいしか無いって事は・・・145cmぐらい・・・か?

「あ・あの・・・。」

「何だ?」

「あ・あとべ君?」

「・・・?」

「苗字・・・漢字でどう書くの?付き添いの人も名前書かなきゃいけなくて・・・。」

「ハァ!?」

何だ!?今こいつ何っつった?
俺の事知らないのか?
いくら1年でも俺の事知らない訳ねぇーよな。
俺は生徒会長までやってるんだぞ。

「お前・・・俺の事知らないのか・・・?」

「えっ・えーと、うーんと。」

眉間に皺を寄せながら考え出した。
本当に知らねぇのかよ。
おーい、入学式ももうとっくに終わって今はもう6月だぞ。
このまま考えさせてもラチがあかねぇー。

「名簿よこせ。」

「あっ、はい。」

自分の名前を書こうと思って、受け取った名簿を見てみると利用名簿者の名前が殆どがって名前にも驚かされたが
(お前毎日どころか、一日に最低3回は来てるってどういうことだ?)
それよりもだ、こいつは俺と同じ学年だった。

「・・・お前、今年転入とかでもしてきたのか?」

「えっ、私?私は中等部から氷帝だけど・・・。」

「お前、氷帝に3年も通ってて俺の事知らないのかよ。。。」

お前はいったい今までどんな学園生活を送ってきたんだ。

「あーはい、・・・その知りません。」

「・・・俺はここの生徒会長だ。」

「あー生徒会長さんですか?」

「そうだ。」

「ちなみにテニス部の部長だ。」

あーテニス部・・・・、あぁテニス部の・・・テニス部!!

テニス部には少し覚えがあるらしいが。

「お笑いホスト集団テニス部!!」

「ぶっ、何だって!?」

こいつ今何て言いやがった。
お笑いホスト集団だと!
何だその組み合わせはよ。

「だって若ちゃんが、顔が良い集団でもあるけどもお笑い担当が多いって・・・。」

ワカちゃん?
何か微妙に聞き覚えのある名前が出てきたな。

「ワカちゃん?」

「うん、幼馴染の 日吉 若。」

日吉の奴め・・・何て事言いやがってるんだ。
今日の練習は俺様が直々に相手をしてやる。

それよりもこんな所で、無駄な時間を潰してる暇は無い。
さっさとこいつの手当てをして部活に行かなきゃならねぇ。
俺はシップと包帯を取り出して処置をしてやった。

「どうもありがとう跡部君。」

「それよりもお前、その足で帰れるのかよ?迎えに来れる奴は居るのか?」

「あー、んー何とか帰れるから大丈夫だよ。」

「無理に決まってんだろう。捻ったばっかりで腫れは引くどころか今日一日は腫れたままだぞ。」

「うー、私今一人暮らしみたいなもんなんだよね。」

「みたいなもんって何だよ。」

「お父さんが1年ばかり赴任してて、それにお母さんも着いて行っちゃってるから・・・それに兄妹居ないし・・・。」

ハァァ。
しょうがねぇ、一度面倒を見ちまったもんは。

「俺の部活が終わるまで待ってろ。」

「えっ?」

「部活が終わったら、車で送っててやるよ。」

「いいよ、そこまでしてもらうのは悪いよ。」

「一度見るのも二度見るのも三度見るのもこの際一緒だ。一度関わっちまったもんは最後まで面倒見る。いいな!」

「・・・・はい。」

「で、お前はこのままここで待ってるか?」

「あー、迷惑でなければテニス部を見学したいなーとか?思ってるんですが・・・駄目ですかね?」

「別に構わねぇーが・・・。」

また、俺が運ぶのか?
あーでもまぁーどうせまた送ってく時に運ばなきゃならねぇーなら同じ事か。

「お前荷物は?」

「教室です。」

「クラスは?」

「L組です。」

あー成る程な、見かけた事無い筈だ。
氷帝は馬鹿デカイからなクラスがA〜Lまであるが、A〜F、G〜L双方片方づつに振り分けられてしまうと滅多な事では顔を合わせる事が無い。
何せ校舎が替わってしまう。
下手したら3年間知らない奴が居ても頷ける訳だが、それは一般生徒の場合であって俺に通用するもんでは無い。
携帯を取り出し、

「・・・俺だ、樺地、今から3年の教室に行って、俺の荷物とL組のって奴の席から鞄持って部室に置いておけ。」

後は、この荷物を持って行くだけだ。

「おい。」

「はい。」

「これからまた、お前を抱えてテニス部の方に行くが、くれぐれも大声上げるなよ!」

「落とすからな」と脅し文句を一つ加えて抱え上げた。
なるべく人目に付かなく人通りの無い場所を選んで歩く。
俺は自分が人気あるのを十分に理解してる。
でないと大きな騒ぎになりかねかけねぇ。
とんでもねぇ噂とこの女にどんな被害が及ぶか解らねぇからな。
こんなにちっちぇーんだ、突き飛ばされたらどんな怪我をするか・・・。
ただでさえ何にも無い所で転ぶんだ。
被害は最小限がいい。
別にこいつは、俺が俺だと知っていてわざと俺の気を惹く為にやった訳じゃないだろうしな。
だったら、あんなに豪快にパンツは見せねぇだろうし。
それに保健室の利用者名簿に、こんなに馬鹿みたいに名前を連ねてる訳もねぇ。
あーだこーだと色々と考えているうちにレギュラーの部室へと着いた。
流石に時間も時間で、俺が選んで通った場所は見事な程誰とも会わなかった。
を降ろして部室のドアを開ける。

「入れよ。」

「お・お邪魔しまーす。」

周りをキョロキョロしながら入ってくる。

「そこのソファーにでも座ってろ。」

「は・はい、失礼します。」

俺は自分のロッカーを開けてジャージを取り出し着替え始めた。

「ひぃー。」

後ろから変な奇声が聞こえた。
振り返って見るとが耳を赤くしながら俺とは逆方向を見ていた。

「フッ、別に減るもんでもねぇから見ててもいいんだぜ?」

「けっ・けっ・結構です。」

他の女なら喜んで見学するだろうによ。
元々俺を知らなかったんだからそれはそれで当たり前かも知れないが。
さてと。

「着替え終わったぜ。」

いつまでも後ろを振り返っているに声をかけた。

「俺はこれから部活に出るが、お前はこの部屋の窓から見学してろ。」

「えー外に出たら駄目なんですか?」

「当たり前だ、お前はあそこに居る奴らにボコボコニされたいのか。」

テニスコートのフェンスに群がり、ギャーギャー叫ぶ女ども指差した。

「・・・ここで大人しくしてます。」

「懸命判断だな、喉が渇いたらこの冷蔵庫の中から好きなのを取り出して飲んでいい。」

「はい。」

「それと俺が戻って来るまで部室から出るなよ、いいな?」

「はい・・・。」

忠告を一つして俺は部室から出た。











アトベケイゴ6つのお題トに続く・・・。


 コメント:中途半端な話で終わってしましまてますが、一応6話完結での連載の方向でお願いしますw。
      もしかしたら、もうちょっと書くかも知れませんが・・・。
      まぁ、第1話なので話もそんなに内容ありませんが・・・。(UP.07/11/18)