『・・・いや、お前の事が好きだから…………
だから、お前に誤解して欲しくなかったんだよ。』
クリスマス時期に色々とあったけど…って言うか大まかな原因は私にあるけれど。
私は好きな人と両思いになった。
バレンタイン・キッス
一年に一度のバレンタインディ。
初めての彼氏にあげる本命チョコ。
昨年までは好きだとバレル訳にもいかないし、告白する勇気もなかったから皆と同じ義理チョコ。
でも今年は本命チョコ!!
待っててねダーリン。
なーんて、ただでさえ名前で景吾なんて呼んでいないのに、本人目の前にしてダーリンなんて言えないけど…。
今年はどんなチョコがいいかな?
基本的に跡部は甘いものが好きじゃない。
去年・一昨年とやっぱりあげたバレンタインプレゼントはそんなに甘くないものをチョイスしたけど。
今年はやっぱり…そのね、彼氏な訳だから昨年までとは違うプレゼントにしたいなぁって思ってる。
だって本来はクリスマスプレゼントをあげる予定が、まぁ色々とあったりしてあげなかったからさ。
えぇ、そうですとも…それもこれもぜーんぶ私が悪い訳ですけどね!!
何せ私は一度こうだ!って思うとドンドン溝に嵌ってちゃうんだよね。
相手の話聞かないで自己完結しちゃう所とか…あるし。
しかも、それに関わる事すべて遮断しようとするしね………。
まったくどうしようも無い子ですよ……。
そんなどうしようも無い私だけど…どう言う訳だか跡部は好きになってくれたんだよね。
あの…あの跡部がだよ?
両思いになんか限りなくゼロに近いと思ってた。
だからせめて跡部に彼女がいない今は、傍にいられればいいって思ってた。
でも、クリスマス時期の街中で誤解だったけどあんな事があって……。
全然自分の気持ちに整理なんか付いてなくて。
だってパーティーに誘ってくれた時に彼女いないって言っててさ、街中であれでしょう?
いないって言ったから安心してた。
ホッとしてた。
裏切るって言い方はおかしいかもしれないけど、街中であのシーンを見た時は裏切られたって思った。
心臓が切り裂かれる程痛くて……苦しくて。
跡部に関する事すべてにおいて目を逸らそうとしてた。
でも人って調子がいいもんでさ………あれだけ目を逸らそうとしてたのに、いざ跡部の従姉妹に真実を聞かされてみたらさ…やっぱり仲直りしたいって思っちゃったんだよね。
調子いいと思うけど、これだけは誤解して欲しくない……跡部が好きだって気持ちは本物だから。
あれだけ跡部に関する事から目を逸らそうとしても全然諦めきれなかった。
忘れよう…忘れようと思うたびに……顔を見たい…声を聞きたい………会いたい…って想いは募っていくばかりで。
でも………好きっていう気持ちは本物だから。
だから私は、自分の気持ちに素直になる事にしたんだ。
ただ純粋に元の関係に戻れればって。
邪な気持ちは無かったよ?
だって自分の立場は一応弁えてるつもりだし。
私の片思い率が100%だって思ってたし。
ただ最後に大誤算な展開が待ち受けてるなんて思ってもみなかったけどね。
まぁ、色々とあったけど今こうして幸せでいられる事はすごく嬉しい。
それよりも問題はプレゼントをどうするか……だよ。
本当どうしよう?
そんな事考えながら街中をブラブラしてたんだ。
どこもかしこもお菓子屋さんは皆バレンタイン一色。
どれも美味しそうで目移りしちゃう。
なんて言っても、私が食べる訳じゃないけどね。
少しでも周りと違う物をあげたいって思ってるんだよね。
だってさ、彼女が出来ても跡部の人気は相変わらずだしさ…。
あわよくば、隙があれば女の子達は奪おうと思ってるみたいだしさ。
なにせ私は何の取り柄も無い普通の女の子だから。
だから、綺麗な子や可愛い子なんかは私からすぐに奪えるって思ってるんだよね。
今だにどうして跡部が私の事選んでくれたのか解らない。
だって現に私より綺麗で私より性格良くて私より頭が良くて………なんて例をあげてもキリが無いけど…まぁ兎に角私よりもいい女なんていっぱいいるんだよ。
それにさっきも言ったと思うけど………ね?思い込みの激しい性格……ネガティブな私…そんなマイナス思考の私のいったいどこに惹かれたの?って。
いくら考えても仕方ないけど。
平凡な私だけど、跡部の事どれだけ好きかって伝わってればいいと思う。
マイナス思考で駄目な私だけど、跡部の事好きって気持ちだけはプラスだよ。
減っていく事なんて無いんだ、むしろドンドン増えていくばっかり。
だから私のこのありったけの想いを跡部にプレゼントしたいって思ってた。
そんな時に毎年この時期になると必ずどこからか聞こえてくる定番のテーマソング。
その歌を聴いてこれだ!!って思ったんだ。
なんて安易な考えって思うかもしれないけど。
一番大事な事は心がこもってれば相手に伝わるって思ったの。
とりあえずチョコはシンプルな洋酒の効いたビターチョコを買って家路に着いた。
決戦はバレンタインディ。
本日は晴天に恵まれお日柄的にも良く………。
予想通りの展開ですよ!!
今は部活もしてないし、跡部とはクラスが違うから直接手渡ししたいと思って行ってみれば……廊下にまで溢れ出す人・人・人。
しかもすさまじいです…(泣。
あのすさまじい中に到底私なんかが割り込めるわけもありません。
だって怖いんだもん。
『あんた邪魔よ!!』
とか
『あんたの方こそ邪魔よ!!』
とか
『跡部君は私の物よ!!』
とか
言いたい放題…仕舞には髪の毛引っ張ったりとか押したり引いたり。
相変わらずの人気で。
あんな地獄絵図になんて入ってイケマセン。
ただえさえ目の敵にされてるのに格好の餌食ですよ。
だから取り合えず朝は諦めました。
でも、授業の合間の休み時間もお昼休みも同じ状態……。
放課後も………。
まだ帰宅してはいないみたいだったけど、教室には机の上に鞄がちょこんと&山盛りになった甘ったるい匂いが立ち込めるプレゼントの数々。
なんか妙に虚しくて山盛りの頂上に置いて帰ろうかとも思ったけど。
でも、プレゼントはそれだけじゃないから…。
どこに居るかなんて解んないけど、取り合えず校舎内を方端から探してみる事にした。
まずは生徒会室。
もう生徒会長は引退してるけど、ここに非難してるかな?とか思って。
でも…残念ながら居なかった。
その次は音楽室。
たまに気まぐれで学校のピアノを弾いてる時があるから。
……ここも違う。
まさか…と思って自分の教室に行って見たけど。
すでに内のクラスは物けの空。
カフェテリアにも居ないし、至る所校舎内を探して歩いてはみたけれど一向に見つかる気配が無い。
やっぱりあそこかな……部活も引退したとは言ってもよく顔を出しては後輩指導とか今だにしてるし。
なんてひとさし指を顎に考えながら歩いていたら、冷たい風が吹き抜けた。
丁度今歩いてる所は2階の渡り廊下。
「こんな寒い時期になんで窓なんか開けてるかな…。」
まぁ、掃除してた時に換気の為に開けて閉め忘れたんだろうけどさ。
しょうがない閉めておいてあげるか。
まぁ、どのみち最終的には警備員の人とかが戸締りはしてくれとは思ったけど。
気づいちゃったし、そんな手のかかる事でも無いし。
ここの真下は中庭が見渡せる位置だし、居ないとは思ったけど確認の為見ようかと思ったのがいけなかった……。
『……好きなの。』
自信に満ちた声が聞こえた。
普段だったら、見て見ぬ振りをしてその場を後にしたと思う。
でも……相手が………跡部だったから。
聞きたく無くても足が固まったように動けなかった。
この真下に居る。
木々に隠れて微妙に見づらいけど…見えなくも無い。
告白してる女の子は綺麗な子だった。
男子の中でも競争率が高いって有名な子。
絶対に自分は振られない自信満々な表情。
『俺には付き合ってる奴が居る。』
『知ってるわ……さんでしょう?ねぇ跡部君、さんより私の方が絶対貴方と釣り合いとれてると思うの。だから私と付き合ってよ。』
『フン、すごい自信だな。』
『だって事実でしょう?』
『俺は意外と付きあう気なんてこれぽっちもねぇーよ。』
『あんな何にも取り柄の無いあの子のどこが良いって言うのよ!!』
その言葉、私の心臓にグサッと突き刺さった。
確かに私は自分でも解ってるよ平凡な子だって。
だけどやっぱり人から言われると辛い。
『ねぇ…跡部君』
更に……………その子は跡部の頬に手を添えた。
ヤメテ跡部に触れないで。
『私、貴方を満足させてあげれると思うわ。』
『へぇ〜、どうやって満足させてくれるって言うんだよ?』
『フッ……解ってるくせに。』
ヤメテ跡部に近寄らないで!!
固まっていた私の足は1歩2歩と後ろに動いた。
「ヤメテェ………。」
不敵に笑った跡部が、頬に添えてるその手に重なるように触れたから。
ヤメテ…ヤメテ!…ヤメテヤメテヤメテ!!
その先を最後まで見てられなかった…。
心が痛いよぉ。
やっぱり跡部も綺麗な子が良いの?
だったら何で私を選んだの……?
ただの気まぐれだったの?
好きって…嘘だったの?
胸が痛すぎて苦しすぎて。
呼吸出来ないよぉ。
無我夢中で走った先は屋上だった。
大きな音で閉まった扉の音さえ気にならず。
ドアに寄りかかったままズルズルと地面へと座った。
「ぅくっ…うぅ……っ。」
また私の勝手な思い込みかもしれない。
でも…不敵に笑った跡部の顔。
重なるように触れたその手。
どうなったかなんて解らないけど。
でも想像してしまうその先は……考えたく無い結末。
好きって気持ちはドンドン増えていくけれど、それに伴って不安もドンドン募っていく。
跡部はモテルから…………私はいつも不安なんだよ。
片思いも辛かったけど、両想いは更に辛いよ。
拭っても拭っても止まらない涙。
夕焼け色だった空の色は藍色に変わった。
泣きすぎで目はショボショボするし腫れぼったい。
喉はカラカラ。
泣き疲れていい加減ここに居てもしょうがないって思った途端、急に身に凍みる寒さ。
荷物なんて到底持ち歩いてなんて居なかったからダルイ身体を引きずりながら自分の教室へと戻った。
腕時計の示す針はすでに18時を過ぎていた。
3年のこの時期、この時間なんてもう教室になんて誰も居ないと思ってた。
真っ暗な教室に電気を点けた瞬間、心臓が止まるかと思った。
だって誰も居ないと思った教室に人が居たから………。
「……跡部。」
私の席に座り、私の事を痛い程見つめるその視線。
別に約束をしてた訳じゃない。
だから帰ったものかと思った。
………もし待ってたとしても、こんな時間まで居ないと思ってた。
「……今までどこに行ってた…。」
「…………と・図書室……。」
ガタン
椅子から立ち上がりこちらの方へと一歩…一歩近づいてくる。
あっ…………マズイ。
近くにきたら泣いたのに気づかれちゃう。
絶対に目が赤い筈だし…鼻も赤いと思う。
だから一歩近づいてくる度に、私も一歩下がる。
視線も下がっていく。
「オィ、なんのマネだ。」
「何のマネだって………別に。」
掴まれた腕。
トン
背中に当たる壁。
逃げ道はもう無い……。
「………図書館に居たわりにはずいぶんと冷てぇーな。」
握られた部分から跡部の暖かい体温が伝わってくる。
じわっと伝わってくる熱にさっきあれ程泣いたというのに何故だかまた、涙が出てきそうになった。
触れられた髪の毛に沿うようにその手は顎へ。
そしてそのまま上へと促す様に上げさせられた顔。
視線があった瞬間、ひどく驚いた跡部の顔がそこにはあった。
「何があった……?」
首を振るだけの私。
泣いてはいないけど、先程泣いた涙の跡をたどるようになぞる親指。
「泣いてたのか?」
「……やっぱり私には……跡部は相応しく無いよ。」
震えながら辛うじて吐き出した言葉。
「何言ってんだよ。」
「だって………誰も認めてくれない。」
そう、だから後から後から跡部にモーションかけてくる女の子は減らない。
「俺がお前を選んだんだ、誰が何を言おうと関係ねぇーだろう。」
「でも跡部もやっぱり綺麗な子とかの方がいいでしょう?」
「顔なんて関係ねぇだろう。」
「だって………綺麗な子だったら……誘惑されても悪い気はしないでしょう?」
「………やっぱりあの足音は、お前だったんだな。」
「……………。」
気づかれてたんだ………。
2階だから足音なんて下にまで聞こえてる筈無いと思った。
しかも、跡部は誘惑されてる最中だったし。
そっちの方に夢中かと思ってた。
「俺が気づかない訳ねぇだろう。」
「ねぇ………キスしたの………?」
「する訳ねぇーだろうが!」
「だって………、あの子の手に添える様に手を添えてたじゃない。」
「馬鹿かてめぇーは!そんもん外す為に手を持ってただけじゃねぇーかよ。」
「………そんなの見てないもん!………そんな…の見られる訳無いじゃない……。」
その先に何があるのか解らないのに見てられる訳ないじゃない。
「………本当に何も無かったの?」
「俺が嘘を言ってるとでも思ってんのかよ」
「……ううん。」
嘘か本当かなんて解らないけど、跡部の瞳は真剣だから。
だから信じるよ。
「…信じるよ。……私、自分の事に関しては自信無いからネガティブ思考でドンドン溝に嵌ってちゃうけど……跡部の事が好きって気持ちだけはいつもプラスだよ。跡部の事好きになればなる程、不安も募ってく。………どうして跡部は私の事なんて好きなんだろう?って、周りの女の子達が跡部に近づいていく程…告白とかされる程ドンドン・ドンドン不安になってく……。不安だらけだけど決して跡部の事疑ってる訳でも信じて無いわけじゃないよ?不安はいっぱいだけど………でもこれだけは自信持って言える、跡部が好きって気持ちだけは本物。」
この想い伝わればいいと思った……。
いつも私は跡部に貰ってばっかりで。
頼ってばっかりで。
だから精一杯私の気持ちが貴方に伝わればいいと思って、私から初めて跡部にキスをした。
一瞬ビクッてなったけど、私の背に腕を回してしっかりと抱きしめてくれた。
私からしたキスは触れる程度。
それでも結構勇気がいったけど……触れてる唇は深いキスに変わった。
ねぇ、これから先も貴方に触れられるのは私だけであって欲しいと思う。
ねぇ、私に触れるのもこれから先ずっと貴方だけでいいと思う。
触れ合った唇から私の想いは伝わった?
「あのさ、跡部は本当に私で良かったの?」
「他の誰でも無い、お前じゃなきゃ駄目なんだよ。」
「……これから先も私の思い込みとかで跡部に迷惑かける事もいっぱいあると思うよ……それでも良いの?」
「……不安になったらいつでも俺に言いに来い。………どんな些細な事でも、お前が不安に思ってる分だけ俺がお前の事どれだけ想ってるか解らせてやるよ。他の誰でも無い……、お前の事が好きかって事をよ。」
コメント:
いつもながらに思いますが、やっぱり名前変換少ないですね私の書く夢は…。
(友達にも指摘はされましたが)
主人公視点で書いてるとどうしてもそうなってしまうんですよ。
まっいいっか(笑。
前回の終わり方が中途半端って言うか、まぁ自分的にはキリよく止めたんですが、取り合えずクリスマスのその後っていう形で書いてみました。
このクリシミマス話は、もしかしたらこれから先も書く事があるかもしれませんとだけ言っておきますw
(08/02/11.UP)。