コンコン。

「入るよぉ〜。」

ドアを開けて岳人と共に部室に入ると、侑士が椅子に座って待っていた。

「待っとたで。」

ホンノリ苦笑いの侑士。

「侑士のドジ。」

棚にある救急箱を取り、侑士の目の前の椅子へと腰掛けた私。

「ハイ、指見せて?」

「すまんなぁ。」

侑士の手を取り傷口にピンセットに取った綿を消毒液に染み込ませ傷口の治療を仕様とした時だった。

侑士の肩に急に伸び出た手。

「!!」

吃驚した侑士の手が振るう様に私の手から離れた途端、出血が止まっていなくこれから拭き取ろうとしていた血が・・・。

私の頬へと飛んだ・・・。

「どうしたのぉ〜?おったりぃ〜?」

「何や滋郎かいな。脅かさんといて急に・・・。」

ドクン・・ドクン・・・ドクン。

急に私の心臓を打つ脈が速くなりだした。

血が私の頬に飛んだ血・・・。

拭おうとした手が何故だか震えて、頬に伸ばす事が出来ない。

何故震えるの・・・?

別に血が苦手な訳では無い筈・・・。

今までこんな事なかった・・・。

吐く息も微かに震えてる・・・。

「あっ、すまんな。」

そう言うと、脱脂綿に消毒液を浸した物で私の頬の血を拭った。

「滋郎が脅かすもんやから、血が飛んでしもうたみたいやな。・・・?」

「ん?ちゃ〜ん?どうかしたぁ〜?」

何とか気持ちを落ち着かせようと深呼吸を繰り返す。

皆の声が遠くに聞こえる・・・。

ドクン・・・・ドクン・・・・・ドクン・・・・・・。

落ち着け・・・落ち着くんだ私・・・・。

「何や顔色が、よう無い見たいやけど・・・?平気か?」

ガチャ。

「あー跡部ぇ〜。」

身体から熱が奪われていく気がする。

、ホンマ大丈夫か?何や段々顔色が悪ぅなっててんで。」

「・・・どうかしたのか?」

「いや、何や急にの顔色が悪ぅなってな・・・、話しかけても答えてくれんねん。」

何皆に心配かけてるのよ!!しっかりしろ!!

目の前がブラックアウトした様に暗くなっていく。

あぁ、このままだと倒れる・・・。

そう思った時・・・。

「おい、大丈夫か?。」

景吾の声が耳元で聞こえて、肩に暖かい重みが掛かった瞬間。

霧が晴れたかの様に、視界が明るくなっていった。

「ふぅ〜。」

軽く一息吐く。

皆の心配した顔が見えた。

「大丈夫ぅ〜?」

「平気か?」

「大丈夫かいな?」

「どうしたんだよ!

ジロちゃん・景吾・侑士・岳っくん、皆本当に心配そうな顔をして私の様子を見ていた。

「ごめん・・・、大丈夫。」

「ホンマか?」

「うん、大丈夫。」

「今日は無理しない方がいいんじゃな〜い?」

「ううん、大丈夫だから。ほら・・・。」

そう言うと私は椅子から立ち上がり、その場でジャンプをしてみせた。

「ねっ?」

「まぁ、顔色もよぅなってきたみたいやけど・・・、跡部どないすんの?」

「本当に大丈夫なんだな?」

景吾は私の目をジッと見つめて聞いてきた。

「うん、平気。」

「そうか・・・・わかった。そのかわり具合が悪くなったらすぐに言えよ。」

「うん。」



何なんだろう・・・・?
何故急に体調が一瞬悪くなったんだろう?
今日は、別にいつも通りだった筈・・・。
別に持病を持っている訳でもなかった筈だけど・・・。
まぁ、この後調子を見て本当にヤバソウだったら・・・病院に行って診てもらった方がいいだろうけど・・・。




その日その後、いつもと変わらない一日だった。
だからその時限りの何でも無い事だと思っていた・・・。









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