「他の奴らはどうした?」

「腹痛で早退した。」

「誰が腹痛なんだよ?」

「みんな。」

「あん?」

「みんなでお菓子を食べたんだけどさ、それがちょっと賞味期限が切れてたみたいなんだよね。」

「お前は食わなかったのか?」

「食べたよ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ、どうしてお前だけは残ってるんだよ。







一 緒 に 素 敵 に お 片 付 け







おもわず盛大な溜息をついてしまう。

「跡部も食べたかったの? まだ残ってるけどチャレンジしてみる?」

「食うはずねえだろうが!」

「怒鳴らなくたっていいじゃない。なによ、跡部の怒りんぼ!」

がプリプリと怒りながらも、目の前にあった箱を冷蔵庫に入れた。

「・・・・・・・それは今の話に出てきた菓子の箱じゃねえだろうな?」



完全に俺をシカトしているのか はこちらを振り向きもせず、冷蔵庫の中をゴソゴソと漁り始めた。

まあ、いくらなんでも賞味期限の切れてるものは食わねえか。



それにしても、冷蔵庫の中がやけに暗いな。

あの冷蔵庫は買ったばかりのはずだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違う。

あれは、ものを詰め込みすぎていて、中の明かりが見えないんだ。



部室にも冷蔵庫はあるし、ここの冷蔵庫を使う気は無いが・・・・・・・・・・使わないまでにも、検査は必要だな。







「フフフフーン。これは明日の朝ごはん。これは明日のデザートに。これは・・」





ガツッ!



「ギャッ!」

「なんだ、この有様は?」

「何? 今、何で殴ったの? すっごく痛かったんだけど。」

「いいから答えろ。この冷蔵庫の詰め込み様はなんだ?」

「なんだって言われても・・・・・・・・あ、分かった! この冷蔵庫が小さいんじゃないの?」

「一般家庭の冷蔵庫と同じ容量の大きさだ!」

「跡部に一般家庭の冷蔵庫の大きさが分かるの!?」



ゴスッ!



「すぐに暴力を振るうんだからー!」

「片付けろ。今すぐ片付けなけりゃ、冷蔵庫の中のものを全部捨てるからな。」

「どうして!? ここに何が入ってるかなんて、跡部には関係ないじゃん! 使って無いんだから。」

「関係あるんだよ。ここは生徒会室だぞ。俺様の領地を汚すな。」

「領地って・・・・・・・どこの世界からやってきたんです、貴方様は?」



「制限時間5分。」

「はあ? ちょっと待ってよ、せめて10分は必要でしょ。」

「お前に反抗する権利があるなんて思うなよ。」

微笑みかけてやると、 が慌てて冷蔵庫に向き直った。







次々と冷蔵庫の中にあったモノが外に出される。





「えーっと、これはまだ食べられるでしょ。これもまだ賞味期限が切れて1週間だから・・・これも大丈夫。うん、これも平気。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こいつは、賞味期限の意味を知らないのか?

駄目だ。こいつに任せてたら、いつまで経っても片付かねえ。

樺地を帰らせたのは失敗だったな。

ちっ、仕方がねえ。



掃除用具入れから、ゴミ袋を1つ取り出した。 はそんな事にも気付かないぐらい、懸命に冷蔵庫からものを取り出している。

しかも全部同じ場所に置いていると言う事は、それをまた冷蔵庫に戻すと言う事なのだろう・・・・・・・・・・・。



手始めに、さっき が冷蔵庫に入れた白い箱を手に取ってみる。

迷わず袋の中へ放り込んだ。

次に手に取ったものも、迷わず袋の中へと放り込む。

その次のも袋の中へ、その次も・・・・・・・・・・・・・・って、賞味期限が切れてないものは無いのかよ?

・・・・・・・・・・・ああ、このプリンは今日までか。



が何か冷蔵庫から出すたびに、俺の手にある袋の容積が増えていく。

しかし、よくもまあ、こんなに菓子ばっかり冷蔵庫に詰めてたもんだな。









「よっし、終わり! 後は今、出したものを綺麗に入れれば問題ないっと。」

が嬉しそうに、こちらを振り返った。

そして、その表情が固まる事、数秒。

「跡部・・・・・・・・・その手に持っている袋は何?」

「決まってるだろ。お前が今日、家に持ち帰るものだ。その辺に捨てたりするなよ。」

「持ち帰る? だって私は今、一つ一つ賞味期限をチェックして、冷蔵庫に戻すものをまとめて置いてたんだけど・・・・・・・それが全部、その袋の中に入ってるよね?」

「そこの足元にあるものだけは冷蔵庫に戻してもいいぞ。」

が俺の視線を追うが、そこにあるのは数個の菓子と調味料が少しだけ。



「これだけ?」

「それだけありゃ十分だ。こんな賞味期限の切れたものを、いつまでも入れておけるか。」

「ひどいよ跡部! ここまで冷蔵庫を充実させるのに、どれだけの時間と労力が掛かったと思ってるの!?」



「・・・・・・・・・・今日、他の奴らが食ったものは、誰がどこから持ってきたんだ?」

「え・・・・・・いや・・・・・・あ・・・・・・・・。」

「この袋ごとくれてやるから、全部一度で持って帰れ。いいな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。」





力尽きた様子ながらも、 が足元の菓子と調味料を冷蔵庫に戻し始めた。

「ああ、ここまでこの冷蔵庫を充実させた私の苦労は・・・・・・・。」

「もっと計画的に行動しろ。」

「ふっ。みんなのお腹の弱さまでは計算出来なかったからね。潔く負けを認めるよ。」



・・・・・・・・・・・・・・・馬鹿は放って置いて、自分の仕事に取り掛かかるとするか。









それにしても、いつもいつも仕事の邪魔をしやがって。こいつは、何をしに生徒会室へ来てるんだ。

今日だって無駄な時間を・・・・・・・・?



パソコンの向こうで何かが動くのが見えた。

そこには、さっき俺が置いたばかりの袋があるはず。

だが、袋が勝手に動くなんて事はありえない。冷蔵庫の方を見てみると、その扉は開かれたままだが の姿は無かった。



座っていたイスから立ち上がると、袋の隣にしゃがみ込んで、ニヘラッとした笑いを浮かべていると目が合った。

・・・・・・・・・・・・・・笑っているわりには、あまり顔色が良く無いみたいだがなあ。



「いや・・・・跡部でも見落としがあるかもしれないでしょ。だから、もう一度賞味期限のチェックを・・・。」

「ほお、そうか。お前は俺に、落ち度があると言いたいんだな。」

「違っ! 念のために確認をと思っただけだよ!」

懸命に首を横に振られたが、もう遅い。



が、しゃがみ込んだまま後ずさる。

「立たないと服が汚れるぜ?」

そう言いながらも、壁際まで追い詰めた の目の前にしゃがみこみ、その両脇の壁に手をついた。

「そんな期待を込めた目で見られたんじゃあ、裏切るわけにはいかないよな。」

「き、期待なんてしてない! 私はまだ大人の階段を登る気はっ・・!!」





片方の手を壁から外し、 の頭を押さえた。もちろん、その間に唇も重ねている。

「んっ・・・・!?」

の唇から漏れた息を合図に、自分の舌を の方へと滑り込ませた。

咄嗟に両手で俺を押し戻そうとするが力の差は歴然で、逆に俺のもう片方の手に動きを封じられる。

最後の抵抗とでも言わんばかりに、足に力が入ったのが分かった。だがそれも、俺が覆いかぶさる様に体重を掛けるまでの事。

の舌に自分のそれを絡みつけ、口内を探っていく。



さあて、今日は何段か大人の階段を上らせてやろうじゃねえか。

お前の期待通りにな。





















9999Hitキリリクで頂きました。