関西地方に限定されるそのしゃべり。

ゆっくりとしゃべる低音ボイス。

その声にセクシィーさを感じる、貴方の声。

いつまでもそばで聞いていたい。

けど・・・聞いていたくない。

矛盾する心。

だって貴方の声を聞いただけで、私昇天出来そうです!!

ゾクゾク、ドキドキです。

声だけでは無く、顔もいいんですよね!!

聴覚でも洗脳され、視覚でも洗脳されまくりです。

さらに言うなれば、香水をつけているらしく嗅覚も刺激されまくりです。

通りすがりなんか、その香りに釣られて付いて行きそうです。

そんな私の願いは私の耳元で、忍足君に『・・・。』と囁き呼んで欲しいです。

でも、私と忍足君はクラスが一緒なだけで別に仲が言い訳ではありません!!

だから、友達でも無いし更に言うなれば彼女でも無い私がそんな事を頼むなんてもっての他です!!

しかも私、頭の中ではかなり馬鹿げた事を考えてますが、頭の中とは違い内気な子なんです。

クラスでも全然目立たない、そんな子なんです。

だから私がそんな事を急に言い出したら忍足君だけで無く、クラスの皆が吃驚です。

頭の中では妄想爆裂ですが、小心者なんです。

数少ない私の友達は、実は私がこんな子って事を知っています。

だから、私が急に『くすっ』て笑ったり、悶えだしたりしたらまた始まったと呆れた顔で見られます(いや、たまにキモがられますが)・・・。

いや、でも、友達の前だけですよ?

決して、仲の良い友達以外の前では至って内気です。

人見知りするんですよ私。




妄想少女






放課後、今日もここ教室からテニス部を眺めています。

毎日の日課です。

日々こうして、テニス部を眺めては妄想の世界へと旅立つんです。

何せテニス部には見目麗しい人々が沢山いますから・・・目の保養です。

テニス部No1の人気者は跡部君ですが、私のタイプは言わずも知れた忍足君です。

こうやって放課後、思いっきり忍足君を凝視して見ている訳です。

教室で凝視をすると怪しい目で見られてしまいますので出来ません!!

月〜金曜日の放課後、まさに私にとっては至福の一時なのです。

ちなみに双眼鏡は必需品です。

見るのはタダですし、想像するのもタダですから。

そうして日々私のお腹を満たしてくれる訳ですよ。

まさにおかずの写真をみながらご飯3杯は軽くイケマス状態です。

そんなこんなしている内に、テニス部は休憩時間に入った模様。

もうそんな時間か・・・。

「しかし、いいよなぁ〜。」

テニス部のマネージャの加賀さんオイシイよな。

まさに女王様状態・・・。

皆地面に肩膝を付き『女王様。』と皆に崇められる。

そしてその中から気分により今日のお供を選び、一日のお世話をしてもう。

テニス部は人数が多いから選び放題。

毎日違う人にチェンジしてたら一周するのに軽く1年近くかかる。

イイ男をはべらす・・・・・・・・オイシイ。

「まさに逆ハーレム・・・クッ。」

とそんな時・・・。

「何がいいん?・・・逆ハーレム?」

「うん・・・・・・んっ!?」

ガタッ・ガタガタガタ。

妄想していて人の気配に全然気がつかなかった私は、急にかけられた声に驚き慌てて思わず椅子からすごい勢いで落ちた。

「い・い・痛ぁ〜〜〜い。」

背中を摩りました。

痛い・本当に痛い・・・、これは絶対に背中の皮が剥けています・・・。

さん・・・、大丈夫か?」

何て事ですか!!

「お・お・お・お・お・お・・・・、忍足君・・。」

あの!!あの忍足君が・・・・私の目の前に・・・。

何てこったい!!

「どもりすぎや・・・、ん。」

そう言って苦笑いをしながら手を差し出してくれた忍足君。

何故こ・こ・ここに・・・!?

目が白黒です。

「何やすっごぉー驚かせてしもうたみたいやなぁ・・・。」

ぽか〜んと馬鹿みたいに口を開けて、反応を示さない私の手を忍足君が勝手に取り、立たせてくれました。

あぁ神様、今日この左手は洗いません!!

こんな至近距離初めてです。

今日は何てツイテイル日なんでしょう。

それより忍足君は、何しにココに来たのでしょうか?

忘れ物でも取りに来たんでしょうか?

と・取り合えず、すっごく緊張しますが聞いてみましょう。

「お・お・忍足君。」

「ん?」

「わ・わ・忘れ物・・を取りに、き・き・来たのですか・・・?」

「あーまぁーそうやなぁ。」

イマイチはっきりしない受け答えです。

何ででしょう・・・・?

「それよりさんは、こんな時間に教室で何してんの?」

!!

「・・・・・・・。」

どうしたもんでしょう・・・・、それは忍足君に語れませんよ・・・。

妄想してたなんて・・・。

「何や、いいなぁ〜とか逆ハーレムとか言ってた気すんねんけど・・・、一体何考えてたん?」

いやーーーーーーーーーー、聞かれてるし!!

どうする・・・。

「・・・き・気のせいじゃないですか・・・?」

「いや×2、俺難聴やないから、ちゃんとそう言ってた様に聞こえたんやけど?」

しっかり聞いてるしーーーーーーーーーー。

レッドランプ発動です。

、馬鹿だから何か良い言い訳が思いつきません!!

「それよりも何見てたん?」

そう言うと忍足君はテニスコートへと視線を向けました。

「テニス部見てたん?」

あぁ、やっぱり氷帝の天才忍足君は、ある程度私が何を見てたのか把握してるミタイです。

あなどれません。

でも、それを見て私が何を想像していたかなんて、エスパーかハタマタ私の友達じゃない以外解りませんが・・・。

まぁ、別にテニス部を見てたのぐらいばれてもいいんです。

「双眼鏡まで持って、誰をそんなに見てたん?」

私の首に掛かっている双眼鏡を忍足君が手に取り聞いてきました。

そして事もあろうに忍足君は、私の耳元に唇を寄せ囁きました。

す・すごいです、か、かなり至近距離です。

あぁ、いい香りが・・・。

「なぁ・・・誰見てたん?・・・・ちゃん。」

ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

お・お母さん・・・・・・しょ・昇天しそうです。

あの、あの忍足君に名前を呼ばれましたよ。

「ん?ちゃん?」

「・・・・・・・。」

隊長駄目です、は、はもう・・・力つきそうです。

って言うか何で急に名前で呼んでるんですか、忍足君!!

駄目です。本当に駄目です。心臓がかなりの速さで脈打ってます。

忍足君とお近づきになれるチャンスかも知れませんが、このままだと私の命が危ういです。

ことわざにもありますが、ここは一先ず逃げるが勝ちです。

いや、何の勝負もしてませんが、私の気持ち的にはこれは戦いです。

真剣な戦いなのです。

思い立ったが吉日。

帰る準備はもう万全だったので、勢いよく鞄を手に取りました。

そして教卓上にある時計を見て言いました。

「あ゛ぁ゛、もうこんな時間帰らなきゃ。」

すごい白々しいです。

ハイ、棒読みです。

決して名女優に何かにはなれません。

忍足君の手の中にある双眼鏡をすばやい動きで取ると、猛ダッシュで教室を出ました。

もう今までで最高記録の勢いで下駄箱まで走りました。

すごい形相をしていたと思います。

それはもう狂犬病に侵された犬並みです。

でも幸い誰にも会う事無く下駄箱まで辿り着く事が出来ました。

しかし、今はいいです。今は・・・・。

問題は明日からどうするかです。

忍足君にたいして、不審部分をかなり残しぱなしで来てしまいました。

「・・・・・・・。まっいいっか。」

明日は明日の風が吹く。






その後、教室に残された忍足君がこんな事を言ってた何て私は全然知りませんでした。

「嫌われてんのかな・・・?いやでも、絶対落としてやるでぇ。」

と・・・・・・・。