爽やかに薫る五月の初旬。
休みの合間平日の放課後。
とある部室での一コマ・・・いや何コマでしょう?
本日の妄想少女は、主人公視点丸っきり無しのお話です。
新学期から早一ヶ月が過ぎ、クラスの雰囲気にもだいぶ慣れてきた頃。
男子テニス部正レギュラーの部室。
何だか大層ご機嫌宜しい男子が一人。
鼻歌なんぞ歌っちゃったりしちゃったりして、周りから視線浴びまくりの人物が・・・。
その名を忍足侑士。
男子テニス部、いやいや校内人気NO2の名を馳せているこれまたものすごっ〜〜〜くカッコイイ美男子。
言わずものがなNO1は氷帝の帝王事、跡部景吾。
校内の人気をホボ男子テニス部正レギュラーが独占中のこのグループ。
そんな忍足にちょっと遅い春が来ました。
青春真っ盛りな中学3年生。
「オィ、岳人。」
鼻歌交じりで超ご機嫌な忍足を横目に跡部が岳人に声をかけました。
「ぅん?何だよ跡部。」
「あの馬鹿は、どうしたんだ?」
跡部が視線を向けている方へと同じく視線を向ける岳人。
「あの馬鹿・・・?あぁ、侑士ね。」
その言葉と共に周りに居た人間も同調して耳を傾けた。
「あっそれ、俺も気になってた。最近、忍足異様な程機嫌良いよな。」
と宍戸。
「何か良い事でもあったんですか?」
と長太郎。
「グーカーグーカーzzz。」
いつもの如くジロー。
「・・・・ウス。」
今一何を言いたいのか解らない樺地。
「じつはな・・・。」
「「「「「じつは・・・・?」」」」」
「侑士に春が来ました。」
「「「「「ハァ?」」」」」
「だーかーらー、侑士に春が来たんだってば!!」
「春ってあれか・・・?季節の春か・・・?」
「ちげぇーよ!ようするに好きな人が出来たって事だよ。しかも・・・初恋です!!」
「・・・・。」
「この歳で初恋って遅いだろう。」
「宍戸さん、人はそれぞれですから・・・。」
「ウス。」
「ハン、それで浮かれてるのか丸眼鏡は。」
「どんな人なんですか?」
「えっとなぁ、名前は・・・確か・・。」
「ちゃんが何やて!!」
苗字を出したとたん凄い勢いで反応した忍足。
「でぇけ声で叫ぶんじゃねぇーよ!この丸眼鏡!!」
「あいた!」
跡部の手とうが忍足の額に入りました。
「ちゃんの話してたやろう?何の話や。」
アイタタと額を押さえつつ問う忍足。
「お前、好きな奴出来たんだって?」
ニヤニヤ宍戸。
「どんな方なんですか?」
ニコニコ長太郎。
ヘラリ。
ニヤケ顔になった忍足。
「出会いはそう、始業式。前々からなえぇなぁ〜って思ってたん。今までクラスはな一緒になった事はなかったんやけどな、これも神様の導きなんやろうな。
中学最後の今年、一緒のクラスになれてん。でな、笑顔にドキュン一撃。」
その時の事でも思い出しているのか忍足は、自分の世界へと入りヘラリと笑い。
「岳人、そいつは可愛いのか?」
「んー普通?」
「何だ、その疑問系。」
「いや、だって・・特別可愛い訳じゃないよ?ただ、なんかそのちゃんていう子の笑顔に侑士は撃沈されたみたいだけどさ。」
「その子の笑顔が忍足的にはヒットだったんだな・・・。」
「ね・・・。」
「何や・・跡部・・・・、ハッ!!お前まさか・・・ちゃんに手出そうとしてるんや無いやろうな!?駄目駄目駄目やぞー!!ちゃんには何人たりとも指一本触れたらいかん!!」
すごい勢いで跡部に詰めかかる忍足。
「詰めるよるなキモ足、唾がかかってんだよ。」
嫌そうに忍足の顎を押し上げる跡部。
「ちゃんは、いつもニコニコしとってなぁ、何か癒されるねん。何かその笑顔見てるとこっちまで嬉しくなるねん。」
(↑激しく間違い(笑)正しくはニヤニヤ)
「告らないの〜?」
いつの間にやら起きたのかムクリとジロー。
「あーいやな、まだ話した事無いねん。」
「お前、新学期始まってもう一ヶ月はたつぜ?」
「何や中々タイミングがなぁ・・・。」
「あー宍戸、意外と純情少年侑士は何を話しかけたらいいかワカンネェーだよ。」
「意外とって何やねん。俺はいつも純情BOYまっしぐらやで。」
「変態ぶりをご披露しかねないから、下手に話しかけられねぇーんだろう?てめぇーは。」
「何やねん変態って!!」
またもや跡部に詰めかかる忍足。
「だから近寄るな、キモ足。」
再度顎を押し上げる跡部。
「何やねん・・・、皆して俺の事貶してからに・・・。」
跡部なんか俺の事変態呼ばわりするし。
何がそんなにいけないねん、たかだか乙女チックに想像してるだけやん。
それの何がいけないちゅーねん。
14歳の青春まっさかりの夢見る少年の何が悪いちゅうねん。
俺の趣味は恋愛映画を見る事や、それに順応して夢見たって乙女チックに想像したってええやん。
しかし、忘れもんするなんてなー。
何やついてな・・。
「まさに逆ハーレム・・・クッ。」
と思ってたら俺ってめっちゃついてるやん。
まさか教室にちゃんが居てるんなんて。
「何がいいん?・・・逆ハーレム?」
しかし、逆ハーレム?何を言ってるん?
「うん・・・・・・んっ!?」
ガタッ・ガタガタガタ。
「い・い・痛ぁ〜〜〜い。」
急に入ってきたから吃驚させてしもうたみたいや。
何や今のごっつ痛そうやな、背中擦ってそう。
「さん・・・、大丈夫か?」
「お・お・お・お・お・お・・・・、忍足君・・。」
「どもりすぎや・・・、ん。」
そんなに驚いたんかな?すごいどもりや。
「何やすっごぉー驚かせてしもうたみたいやなぁ・・・。」
手も差し出してるんやけど。
ぽか〜んと口開けて、反応かえしてくれへん。
取りあえず、いつまでも床の上に座りこんでんのもあれやし。
勝手に手取らせてもらいましょか。
あー何や、柔らこーて小ちゃい手やなー。
あぁ、今日はこの手洗えへん。
「お・お・忍足君。」
「ん?」
「わ・わ・忘れ物・・を取りに、き・き・来たのですか・・・?」
「あーまぁーそうやなぁ。」
「それよりさんは、こんな時間に教室で何してんの?」
このチャンスは逃さへん。
これはもっと会話を広げて仲ようしとかな。
「・・・・・・・。」
そう言えばさっき何や言うとったな。
「何や、いいなぁ〜とか逆ハーレムとか言ってた気すんねんけど・・・、一体何考えてたん?」
「・・・き・気のせいじゃないですか・・・?」
「いや×2、俺難聴やないから、ちゃんとそう言ってた様に聞こえたんやけど?」
何や触れたらいけない内容だったんか?
ちょっと話を変えてみるか。
外見とったみたいやし。
「それよりも何見てたん?」
こっから見えるとこ言うと・・・テニス部!?
「テニス部見てたん?」
よく見ると胸元にぶらさがってるのって・・・。
「双眼鏡まで持って、誰をそんなに見てたん?」
何や誰見てたってー言うねん!
この双眼鏡は誰を映してたっつーねん!
際どい所やったけど、この双眼鏡に怒りを覚え手にとった。
岳人か?宍戸か?鳳か?ジローか?樺地・・・な訳ないやな。
!!まさか俺様何様跡部様か!?
嫌やーそんなん、嫌やー。
徐々に仲良くなっていけばええと思ってたん間違いやったんかーーーーー?
ここはもう誰にも遠慮せんで(←誰に遠慮したんだYO(笑))
名前で呼ばさせていただきます。
「なぁ・・・誰見てたん?・・・・ちゃん。」
「ん?ちゃん?」
「・・・・・・・。」
何や・・・名前で呼んだらアカンかったんか?
しゃべってくれへん。(シュン)
「あ゛ぁ゛、もうこんな時間帰らなきゃ。」
何やすごい棒読みや・・・。
忍足の手の中にある双眼鏡をすばやい動きで取ると、猛ダッシュで教室を出ていった。
一瞬呆けてしまった忍足。
何や俺・・・
「嫌われてんのかな・・・?いやでも、絶対落としてやるでぇ。」
跡部に何か負けてたまるか!
誰の手にも渡さへん!
俺の癒しのちゃん、俺の可愛いちゃん。
笑顔のプリッチィーなちゃん。
俺がちゃんの王子様になってやるんやー。
これからはアタック×2攻撃やで。
「頑張るんやでぇー、侑士ーファィーオー。」
教室に虚しく響く忍足の声。(笑)