星に願いを月に祈りを。
貴方に私の気持ちが伝わりますように・・・。
なーんてお星様に願ったって、月に祈りを捧げたって奇跡が起こらない限りそんな事は天変地異がひっくり返るくらいありえない。
私は別に乙女ではないし、いや、性別的には女だけどもロマンチックを望む乙女では無いって事。
乙女って言葉を聞くとロマンチックって感じがするじゃない?
残念ながら私は、その言葉からかなりかけ離れている女なのです。
見た目的にも、そんな事を言いそうな可愛い子でもなければ、天然が入った頭の痛い子でも無い訳ですよ。
それよりも何でそんな事を急に言い出したかなんて言うと、明日は七夕だから・・・。
何気なしに部活帰りに見上げた夜空があまりにも綺麗だったから、フッとそんな事を思ってみたりしちゃったんだよね。
まぁ、でも、そもそも七夕に願い事をするのもどうかと思う訳よ。
一応はさ、織姫彦星に願をかけている訳でしょう?
2人にとっては、いい迷惑よね・・・。
だってさ、一年に一度逢えるかどうかの瀬戸際な中、そんな一体何人居るんだよ!!って言うぐらいの人間の願いなんて叶えている暇なんてあるわけ無いじゃん。
自分達で手いっぱいでしょう。
よくさ、雨が降ったら逢えないって言うじゃん。
まぁ、そんなの宇宙に行ったら全然関係無い話だけどさ、物語上では逢えない訳でしょう?
2人にしてみればハラハラドキドキな訳よ。
他人にまで気回してられるか!!ってーのよね。
あぁーそれにしても疲れた・・・。
テニス部マネージャーも楽じゃない。
選手も大変だけど・・・、氷帝のテニス部は半端じゃない。
マネージャーなんて言わば雑用係。
それにウチは、部員の数が半端無い。
一応は、正レギュラー・準レギュラー・一般と分かれてマネージャーは居るんだけども・・・。
私が受け持っているのは、色んな意味で大変な正レギュラー。
3年生は私一人だから、必然的にそうなっちゃう訳なんですよね。
私が入った当初は、同学年はもっといたんだけど・・・、まぁキツかったりテニス部ファンに嫌がらせを受けたりとそんな理由で辞めていく人が多かったのよね。
で、残ったのが私一人。
いや、私もそれなりに色々とあったんですよ?
でもね気が強いから、色々と負けたくなかったんだよね(負けるつもりも無いし)。
そしたら何だかんだで、あっと言う間に3年生。
月日が立つのは早いもんですよ。
中学は今年で最後の年だけど、このまま私は氷帝の高等部に進むし、正レギュラーもこのまま一緒に進学するし。
今のままと何も変る事は無いんだよね。
まぁ、ただ、長太郎とか樺地とか日吉とは、一年一緒に過ごせないけど・・・。
でも何も本当に変らないんだよね・・・。
アイツと私の関係も・・・。
「明日も晴れるかな・・・・?」
梅雨の合間。
今日も運良く快晴。
七夕の日は、決まって雨ばかりなのに今年は運良く晴れに恵まれた。
今は、もうオレンジ色が辺りを包みこんで部活の終了も近い。
「笹のはサ〜ラサラ〜♪」
どこからとも無く歌声が・・・。
子供っぽい歌い方だなぁ〜と思いながら、歌声のする方へと視線を向ける。
やっぱり、思った通りジローちゃんだった。
「ジロー下手クソ。」
そこに横槍を入れたのは、同レベルの岳っくん。
「俺の方がもっと上手く歌えるぜ!!」
「俺の方が上手いC〜。」
「「笹のは〜♪」」
やるとは思ったけど2人大声で大合戦。
監督が今日居なくて良かったね・・・。
でも・・・。
「お前らうるせぇんだよ!!まだ部活終わってねぇーだろが!!」
やっぱり落ちた、跡部の雷。
「いいじゃんかよぉ〜、もう後は号令だけだろう?」
「跡部も一緒に歌おうよぉ〜。」
いや、ジローちゃん、それ無理だから・・・。
「誰が歌うか!!」
「えぇ〜、いいじゃん。歌おうよぉ〜跡部。」
跡部に纏わりつくジローちゃん。
「・・・樺地。」
「ウッス。」
「降ろせよぉ〜、カバジ〜。」
あまりにしつこいジローちゃんに対して跡部は、樺地に命令。
その間に跡部は終了の号令をした。
いつもの風景。
七夕だからって何も変らない。
一通り片付けが終わって、正レギュラーの部室へと部日誌を書きに扉を開けた。
ノックも無しに・・・と思うかもしれないけど。
今更誰が着替えてようが、私も気にしないし彼らも気にしない。
それぐらい付き合いは長いからね。
って言うか女に見られてないって言う方が正しいのかな?
何だかそれも悲しい・・・。
さてと日誌を書こうと腰を下ろした。
「なぁなぁ、。」
「何?岳っくん。」
「今日七夕じゃん?」
「うん、そうだね。」
「だからさ、今日七夕祭りしねぇ?」
「ハァ?」
「七夕祭りぃ〜。」
部室のソファーで寝てたジローも祭りに反応して起きてきた。
「お祭りしたいC〜。」
「そうだよな!!ジローもそう思うだろ!!」
「お祭りって、行くんじゃなくて?」
「神社とか七夕祭りやってるとこに行くと混んでんじゃん!!だから、俺らで祭りするんだよ。」
「それに明日は土曜日で、学校も部活も休みだC〜」
「おっ、泊まりでやろうぜ!!」
何か岳っくんとジローちゃんの2人で話がドンドンと進んでいっちゃってるよ・・・。
「泊まりでやるとして、誰ん家でやるの・・・?」
「「そりゃ〜、勿論、跡部ん家。」」
「あーん?」
それまで、本を読んでいた跡部が反応した。
「なっ・なっ跡部いいだろ?」
「お祭り、お祭り。」
2人で跡部を囲んでオネダリ。
「何で俺がお前らの為に提供しなきゃいけねぇーんだよ。」
「だって跡部ん家広いC〜。」
「料理美味しいし、兎に角いいじゃん!!なっ跡部ぇ〜。」
結局は、2人のしつこい攻撃と忍足がその後、跡部の耳元で何かをボソボソと言った後、苦虫を噛み潰した顔をした跡部は折れた。
勿論皆参加。
一度家に帰り、再び跡部邸に集合。
いつ見てもすごい・・・アトベッキンガム。
中に通されて、跡部の部屋に行った。
開けたそこには、沢山の料理とすでにほろ酔い加減の皆。
未成年だから飲んだらいかん!!って言うのは今更です、ハイ。
「ちゃ〜ん、待ってたよぉ〜。」
手を振り振りテンション高いよ、ジローちゃん。
「おーー・ーーー。」
ピョンピョン元気な、岳っくん。
「、聞いてくれよ。」
グチグチと文句を垂れる、宍戸。
「先輩、うぅっ・・・。」
泣き上戸だったのね・・・、長太郎。
「ウッス。」
「樺地は飲んでないのね。」
「ウッス。」
残る2人は、言わずものがな変り無いわね。
2人で飲み比べしてるみたい。
私来るの遅かったかな・・・。
「何かついて行けない。」
フッと視線を向けたバルコニーに笹が。
飾りつけもしてあるみたいだし、短冊が付けられてるみたい。
私が来る前に願い事でも書いて吊るしたのかな?
皆が何て書いてあるのか気になった。
フラフラとバルコニーに出て、吊るしてある短冊を手に取って見てみた。
羊の枕が欲しいです。 ジロー
身長が伸びます様に。 岳人
勝つ!! 宍戸
いつも笑顔で居られます様に。 長太郎
皆さんがいつまでも元気であります様に。 樺地
皆らしい・・・。
「あれ・・・?」
跡部と忍足の短冊が見当たらない。
まぁ、多分跡部は馬鹿にしてやらなかったんだとは、思うけど・・・。
忍足が書かないって言うのは珍しい。
笹の近くに置かれていたテーブルの上に、何枚か残っていた短冊。
願い事なんか特に無いけど、何か私も書こうかなと思い手に取った。
「何て書こうかな・・・?」
「本当に叶えて欲しい願い事、書いたらどないや?」
「お・忍足ぃ〜、吃驚したぁ〜。気配消して急に話しかけないでよ・・・。」
「すまん、すまん。何や皆の輪の中に入らんとこっち行きよるから相手してやろぉ思ってな。」
「当たり前じゃない。来たとたんあんなテンションの中に、急に入れないでしょう。」
「そりゃーそうやな。」
「それに、丁度ここが目に入ってさ、皆どんな願い事書いてるのかなー?とか思って・・・そう言えば忍足は短冊書かなかったの?跡部が書かないのは分かるんだけど。」
「あー、書いた事は書いたんやけどな・・・。」
「だったら吊るせばいいじゃん。」
「破られた。」
「ハァ?」
「跡部に破られたんや。」
「忍足・・・何書いたの・・・?」
「いやぁ〜俺はな、跡部の幸せを願って書いてやったんにな・・・アイツ、ビリビリに破きやがったんや。」
「だから何て書いたのか聞いてるの」
「聞きたい?」
「聞きたいから聞いてるんだけど?」
「あんな、『跡部の気持ちが報われます様に』や。」
「えっ・・・跡部、片思いしてるの・・・?」
「あー片思いやないとは思うけどな、跡部の気持ちが相手に伝わって無い言うた方が早いかな。」
「・・・ふ〜ん、そう。」
言葉では平然とそう返したけど、心の中では動揺。
そりゃ〜この年で好きな人が居るのは当たり前だけど・・・。
ショックだ。
跡部に好きな人が居た事も・・・。
それが両思いだろうという事も・・・。
「侑士ーーーー。」
テンションの高い岳っくんが忍足を呼んでる。
「何や岳人が呼んでるみたいやから、ちょいと行くな。」
「うん。」
忍足がそこから離れた瞬間、椅子に腰掛けて短冊に書いたのは。
『何も変らずずっとこのままで・・・。』
跡部が想っている女の子と一緒の所なんて見たくない。
それだったら、部活仲間でもいい。
何も変らず、ずっと変らずこのままでいい。
乙女チックに『両思いになります様に』とか『私を見てくれます様に』とか望まないから・・・。
ただ、変らずこの瞬間をこのままの関係で、ただ傍に居られればいい。
そう思って書いた短冊。
いきなり横から手が伸びて、取られた短冊。
「あ・跡部・・・。」
「乙女チックな事を書いてるかと思えば、何だこれ?」
「何だこれって言われても・・・。」
「変らない事なんて何もねぇーんだよ。日々変化しつづけるんだよ。」
「そんなのは解ってるわよ。いいじゃない、そう言う事願ったって・・・。」
いいじゃない。
望んだって願ったって、そんなのは無理なのは解ってるわよ。
無駄足掻きしたっていいじゃない。
願わずには居られないのよ。
「私一人が思う分には何も問題ないじゃない、誰かに迷惑かけてる訳でもないんだから・・・。」
「問題は大有りだな。」
「何よ!?」
「俺は、何も変らずこのままを望んじゃいねぇー。」
「えっ・・・。」
「俺は変化を望む、先を望む。」
「何・・言ってんの・・・?意味解んないよ。」
「前々から鈍いとは思っていたがな・・・。お前馬鹿じゃねーのに。」
「何よそれ!!」
「俺は、お前との関係をこのままで終わらすつもりはねぇーって言ってんだよ。」
「ハッ?」
「・・・・実はお前馬鹿だろう?」
「さっきは馬鹿じゃないって言ったり、今度は馬鹿って言ったり一体何なのよ!!」
「俺はお前の事を好きだって言ってんだよ!!それぐらい解れよ馬鹿!」
「なっ!!」
どうしよう・・・。
別に星に願いも月に祈りも捧げて無いけど、天変地異がひっくり返る出来事が・・・起きました。
「でっ?」
「でって?」
「俺は今お前に告白したんだよなぁ?」
「う・うん、で?」
「・・・ハァ、返事。」
ヤバイ、ヤバイよ私。
下を向いて頬に手を当てる。
心臓ドキドキ、顔が熱いよ。
きっと真っ赤だ・・・。
跡部はニヤニヤしてるし・・・。
返事聞かなくても解ってるんでしょう?
でも、ここは・・・・。
「・・・好き、です。」
「当たり前だよな。」
「なっ!」
反論しようと下げていた顔を上げた瞬間。
チュッ。
キスされた。