桜の華が満開に咲き乱れる春。
真新しい鞄に制服。
おろしたての茶の革靴。
私は今日からココ氷帝学園中等部に入学。
新しい生活が始まります・・・。
上手くやっていけるのでしょうか・・・?
期待と不安に苛まれながらも私は校門を潜り抜けた。
緩やかな風が私の頬を撫でる。
暖かな日の光。
今日は本当に良い天気に恵まれた。
正しく快晴である。
日の光に目を細めながら私の視界に入ってきたのは、ヒラヒラと舞う桜の花弁。
「あっ・・・桜。」
桜の花弁に誘われる様に視線を動かしたその先に、桜の木々達。
「ん・・・。」
強い風がいきなり吹きつけ私は一瞬、瞳を瞑り髪を押さえた。
瞳を開けたその先には、桜吹雪。
「ぁ・・・。」
その桜吹雪の中に佇む一人の少年。
桜吹雪が舞う中・・・。
そんな幻想的な雰囲気の中、その少年と瞳がぶつかった。
(あっ・・・綺麗な子・・・。)
私がその少年を見つめていると事もあろうにその美少年は、
『バーカ』
と声に出さずに言った。
(ムッ!何だ!!何なんだ!?ムカツク・・・・。)
それが丁度2年前のこの時期に初めてアイツと会った瞬間だった。
出会いは最悪。
何で初対面の奴にバーカと言われなきゃいけないのか解らなかった。
でもこの2年間、アイツと付き合っている内にそれが口癖なのだと気が付いた。
口も悪いが、態度も横柄、一見顔だけがよろしくて性格が悪そうだが、本当のアイツは実はいい奴。
口が悪い中にも実はその中には優しさがあり、態度が横柄なのは自信の表れで・・・。
顔のよさに惹かれた訳では無いが、そんなアイツの内に秘めた物に惹かれない訳がなかった。
「おーい、ーーー。」
桜を眺めながらフッとそんな事を思い出していた時に遠くから呼ばれた。
「あっ岳っくん、どうしたの?」
呼ばれた相手は、丁度私と差ほど身長の変わらない(私の方が少し低い)向日岳人、事、通称岳っくん。
「何してんの?」
「桜見てたの。綺麗でしょう?」
「おぅそうだな!あっ、それよりもちょっと来てくれよ。」
「何かあったの?」
「侑士の奴がさぁ、馬鹿だから部活前に指切っちゃったんだよな。」
部室に向かいながら会話をする(ちなみに私はテニス部のマネージャーです)。
「指きっちゃったって何してたの・・・?」
「今美術でさ、版画するのに木を彫ってるじゃん?」
「あぁ、それで彫刻刀で切ったのね・・・。」
「そうそう、それでさ結構深く切っちゃって血がさぁ・・・。」
「それって私に言うより保健室に行った方が早いんじゃないの?」
「保健の先生今日出張で居ないじゃん。」
「あっそうだったね。侑士も結構ドジな所があるんだね・・・、器用そうなのに。」
それがマサカ私の体に徐々に異変を知らせる切欠になるとは、この時の私には解らなかった。
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