何とか、穴に潜るまではいきませんでした。
跡部にまだ彼女が居ないって・・・。
ちょっとホッとした。
色々と噂は出回ってはいるけども、さすがに本人が違うって言ってるんだから違うんだ。
でもいつ出来るか解んないけど・・・。
跡部はモテルからさ。
初対面の人だって一発で落ちちゃう程、すべてにおいてパーフェクトだから。
顔美形・容姿端麗・頭脳明晰・運動神経抜群・性格・・・ちょっと俺様、で極め付けはお金持ち!!
好きなタイプにもよるとは思うけど、これで惚れない人はまずそうそうにいないと思う。
まぁ、私が好きになった理由はちょっと難癖ある性格なんだけどもね。
かっこいいなーとは思ってたけどさ。
最初は性格が結構横暴だと思ったけど、でもこう接している内に本当の内面性が見えてきてさ。
その内面性に惚れた訳です。
ちゃんと跡部を見ていれば、本来の姿が解る。
んーちょっと解りづらいとは思うけどね。
と言うか、そもそもあまり出しはしないんだけど。
多分・・・多分ね私が思っている所では信頼した人にしか本来の部分を見せてないんだと思うんだ。
カリスマ的部分もあるし責任感があるし、だからリーダーシップを取れる奴。
そんなんだから生徒会長にテニス部200名居る中のトップ(部長)もしてる。
でも、それだけじゃ普段の跡部しか見てない人達は跡部に付いて行かないと思うんだ。
特に癖のあるレギュラー達はね。
本来の跡部の性格やらをちゃんと解ってるから、部活でもそれ以外でも親しくやってる。
部活仲間としての付き合いも長いし訳だけど、私にもふっとした時に見せてくれる普段では見れない部分とかを見ると『あぁ、私でも信頼してくれてるんだ』って思う。
告白する勇気も度胸も無いけど、跡部に彼女が居ない今はこの関係に満足してる。
そう、満足してたんだよ。
今日は、来週あるクリスマスパーティーに行く為に買うプレゼントと何かいい服があれば買おうかな?と思って出掛けた。
服は別になければ、去年とか着た服があるからいいんだけど。
問題はプレゼント。
何を買ったらいいのやら・・・。
プレゼントとは言っても別にプレゼント交換をする訳じゃないよ?
じゃぁ何のプレゼント?って。
あのね、パーティー参加させてもらうだけじゃ悪い気がして毎年何かしらプレゼントを買って跡部に渡してるんだ。
私は別に特別お金持ちな訳では無いから、そんなに高いものあげられる訳じゃないけどね。
一昨年はスノードームすっごく綺麗なの見つけてね、それはちょっと値が張ったけどライトが付くの。
下から何色か照らされるのでさ、すっごく綺麗だった。
テニス部レギュラーとは跡部の家によくお邪魔するんだけど。
それをプレゼントした後に跡部の部屋に行ったらそれが飾ってあったの。
跡部も気にいったって言ってた。
毎年冬の時期になると飾ってくれてるみたいでさ。
嬉しいよね。
で、去年は香水。
香水なんて良し悪しがあるし、人の好みってもんもあるとは思ったけど。
跡部がよく使ってる香水の匂いと似た系統で『あっこれ跡部に似合いそう』って思ったものをたまたま見つけた。
それに私が選んだものを身に纏って欲しかったっていうのもあるけど。
気に入ってくれるかどうか不安だったし。
それはそれで悲しいとは思ったけど、『気に入らなかったら捨てていいよ?』って言ったの。
でもね、跡部喜んでくれて、気に入ったって。
すっごく気に入ってくれたみたいで、その後もそれをずっと愛用してくれてるんだ。
今年はどうしようかな?ってフラフラしながら見て回ってたの。
そこでタイミング悪く見たくもないものを見てしまった・・・。
しかもそこでさっさと立ち去ればいいのに、足が硬直したままで。
向こうも私に気が付いてしまった。
「よぉ。」
「・・こんにちは。」
跡部に会ってしまった。
しかも一人じゃない・・・。
横には可愛らしい女の子が、跡部の腕に腕を絡ませて・・・。
「珍しいな、こんな所で会うなんて。」
「そうだね・・・。」
見たくなかった・・・こんな、こんな後景。
「ねぇ、ねぇ景ちゃん、誰この人?」
景ちゃん・・・?
そんなに親しいんだ・・・。
「あぁ?部活のマネージャーで 。」
「ふ〜ん、そうなんだ。初めましてこんにちは。」
「・・・こんにちは、・・・跡部とはどういった関係ですか?」
聞きたくなかったけど・・・でも、自分の首自分で絞めてるって解ってるけど聞かずにはいられなかった。
「えっ景ちゃんとの関係?フフフ。」
「・・おい!」
「彼女でーす。」
ガーンガーンガーン。
彼女・・・。
「そうなんですか・・。」
「うん。」
嘘吐き・・・彼女居ないって言ったのに。
言ってたのに・・。
「ちょっ、待て。お前も「ねぇ、跡部。」」
「やっぱりさ私、行かないよ・・・って言うか行けない。」
「!!」
「・・・ごめん、じゃぁ、ね。」
いつまでもそこに居たくなくて走りだした。
でもものの数秒で、恐らく追いかけてきた跡部に捕まった。
「ちょっと待て、。」
「何?私なんかにカマってないで彼女の所に戻りなよ。彼女不安がってるんじゃないの?」
何で追っかけてくるかな・・・。
独りにして欲しい。
でないと泣けないじゃん。
今、すっごくギリギリなのに・・・。
「お前、誤解してる。」
何が誤解?
だってあの子は彼女だって言ったじゃない。
跡部の事、景ちゃんって言うぐらいちょっとやそっとの付き合いじゃないんでしょう?
それの何が誤解なの・・・。
「誤解って何?誤解って・・・。」
「アイツは違う。」
違うって何?
だったら何であの子は彼女だって言ったの。
違うって何?
しかもアイツは『は』じゃぁ他にも居るって事?
もう、何なんだか解んないよ!!
「もう・・・もういいよ。」
「・・・?」
「・・・跡部の・・・跡部の嘘吐き・・・。」
「嘘吐きって・・・嘘なんか吐いてねぇよ。」
「じゃぁ、何であの子は彼女だって言ったの?じゃぁ何でアイツは違うって『アイツは』って他にも居るって事でしょう!」
私の意志だけじゃどうする事も出来ない。
私が跡部を想ってるだけで跡部には関係無い事。
私がこんな事・・・跡部を問い詰める資格なんて無いのは解ってる。
でも、跡部が好きだからこそ・・・跡部を想う気持ちが強いからこそ。
ショックが大きいんだよ。
気持ちが抑えられないんだよ。
「・・・私だけが独りで、彼氏いなくてさ。それに合わせて居ないって言ってくれたんでしょう?」
「・・・。」
「可愛そうだと思ったんでしょう?」
「!」
「別に彼女とのクリスマス何て25日でもいいと思ってたんでしょう?・・・同情なんて迷惑だよ!!」
「!!」
「私は不参加するから、跡部も勝手に彼女連れてきて皆と一緒にイチャイチャしてればいいじゃない!!」
「・・・いいかげんにしろ!!」
何で怒鳴るの。
何で怒るの。
「・・・何で怒るの?」
「お前が勝手に勘違いしてるからだろう・・・。」
「勘違いって・・・何が勘違いなのよ!」
今の私には、跡部が何を言っても嘘にしか聞こえないよ。
このままだともっと酷い事を言っちゃいそうだ。
そしたら、友達関係も甚だ怪しいよ・・・。
「・・・跡部ごめん。」
私は、跡部をおもいっきり突き飛ばすと走った。
ごめん跡部。
跡部の事だからよろけたぐらいで踏ん張ったと思うけど。
もし、転んで怪我とかしてたらどうしよう?
でも、こうするしかなかったんだよ・・・。
これ以上話をしててもラチなんてあかないし。
下手したらもっと拗れちゃうかもしれない。
跡部を傷つける言葉を言っちゃうかもしれない。
だから、突き飛ばすマネしてごめんね。
でないとまた跡部に捕まっちゃう。
ごめん・・・しばらくは貴方に会いたくないです・・・。
ごめん・・・やっぱりクリスマスパーティーは不参加にします・・・。
ごめんね、跡部。
UP.07/12/16