ここは・・・どこ?
何も見えない、何も聞こえない。
私は確かに今、目を開けている筈。
これは夢なのか?現実なのか?
辺り一面真っ暗闇。
ここがどこでどれだけの広さで何て憶測もつかない。
何故こんな所にいるのか。
目が覚める前まで私は何をしていたのかさえ思い出せない。
夢にしたってこんな夢・・・気味が悪い。
現実ならなおさら。
ただ・・・どうして私はこんな所に居るのか・・・・?
早くこんな所から出たいと願うだけ。


いきなりの閃光の光に目が眩んだ一瞬。

「君は何を願う?」

頭の中に響いてきた声に閉じていた目を開けた。
そこに佇んでいたのは、人の様であって人では無い人影。
左右対称に黒と白の羽を付け、尖った耳を持ち顔にはこれまた背中に生えた羽の様に対照な仮面を被った恐らくは男性らしき人?
不思議と怖いとは思わなかった。

「貴方は・・誰?」
「僕?僕は    。」
「     ?」
「そう。ねぇ、君は何を願う?」
「・・・願う?」
「うん。何を願う?」

突然何を言い出すのか。
その意味さえ解らない。
それよりも私は何故こんな所に居るのか知りたい。
どうやったらここから出れるのか。

「私は何故ここに居るの?どうやったらここから出られるの?」
「それは、君に想いが残っているから。」
「想い・・・?」
「うん、想い。君がまずその想いを願わなければどこにも行けない。ここからも出られない」
「私は何故こんな所に来てしまったの?」
「・・・よく思い出してごらん。」
「思い出す?」
「うん。」

思い出すと言われても・・・、取りあえず自分が誰なのかは解る。
ただ、ここに来るまでの経路があやふやなまま。
私は目が覚めるまではどうしてた?
私の名前は
氷帝学園中等部に通う3年生。
今日は・・・今日はちょっとした用事が在って大好きなあの人が居る部活には行けなくて・・・でも帰り際に会えて・・・・嬉しくて。
嬉しい気持ちのまま学校を後にして・・・・、早足で帰っていて・・・・そんな時ボールが目の前に飛び出してきて・・・・それを追う小さな男の子が・・・・。
男の子がボールを追っかけてて、それに対して結構スピードの出てた車が・・・・・・・あっ・・・・。

「そっか私・・・。」
「うん、思い出した?」
「・・・うん。」





「君は何を願う?」







 
  願えば叶う奇跡








ねぇ、私はこのまま平凡な人生を歩んで、平凡な生活をしていくと思ってたんだ。
そして学生の頃を振り返って、こんな素敵な人が居る学校に通ってたんだ。
大人になったらふっとした時に思いだすんだろうなって思った。
中学生活3年間一度も一緒のクラスになった事もなければ、私は部活もしてないし、ましてや委員会関係なんてものもやった事がなかったし。
一切の係わり合いもなかった人だったから・・・。
ただ、まわりの女の子がカッコいいだとか素敵だとか言っているように貴方に憧れは持ってた。
無論、格好いいし頭もいいしスポーツ万能で・・・。
ただ、貴方と関わりが無い分憧れはあったけど恋愛感情はこの頃はなかった。
私の場合は、やっぱりその人と関わりを持って、その人の内面性まで知らなければ深い感情は湧かなかったから。
でも、出会いってどこであるのか解らないものだね。












もうそろそろ春休みも終わろうとしてた。4月の初旬。
春休み花壇の水遣り担当になっていた私は、ポカポカ陽気で少しボッーとしながらホースでお花達にお水をあげていた。
そこへブンブン蜂さん登場!!
何か耳元でブ〜ンっていう羽音が聞こえるなと意識しないで聞いてた。
花の蜜の匂いに釣られて来たんだと思うけど・・・まさか自分の耳元近くに登場する何て思ってもみてなくて気が付いた私は驚いた。
何て言ったって私は大の虫嫌い。
しかも蜂だよ?蜂!!刺されたりしたら大変だし・・・。
もう兎に角ね蜂を追っ払う事に夢中で周りなんて見てなかったんだよね・・・。
私ったら、所かまわずホースを振り回してたみたいで気が付かなかったんだ。

『っめてぇ。』て声に。

もう、本当にキャーキャー騒いでて、気が付いた時には蜂は居なくなってたけど・・・。
代わりにその場に居たのは、水も滴るいい男の跡部君が表情一つ変えずに立って居た事と、笑いを堪えてる忍足君と向井君が居た。
この時初めて冷や水をかけられるって言葉を理解したよ。
まさか、おもいっきり跡部君に水をかけていたなんて・・・・。

あーどうしよう、どうしようとアタフタ。
取り合えず謝らなくちゃって思って、「ごめんなさい」っておもいっきり頭を下げた。
何度も何度も「本当にすみません!!」って。

憧れはあったけども、この当時はまだちょっとだけ怖くもあった。

だからこれからどうなっちゃんだろう?ってマサカ退学とか!?ってありもしない事を考えたりもした。
だって跡部君は、カリスマ的人気を誇るのも当然だけど、ある意味学園の権力者でもあるし。

もう春先でポカポカ陽気気分で暖かいと言えば暖かいけども、水を被るにはまだ早い季節。
さすがにまだ水は冷たい。

私ってば何て事をしでかしてしまったのさー。
あぁ、本当どうしようー。
どうしたらいいのか・・・。

でもどうする事も出来なくて、謝りつづけるしかなかった。
わざとじゃないにしろ、やっぱ普通水なんてかけられて『いいよ、いいよ大丈夫』なんて言う人なんか中々いないだろうし・・・。
今頭下げたままだから跡部君の様子が分からない・・・。
やっぱそうとうご立腹なんだろうか・・・?
何も言ってくれないと・・・気まずい。
死刑宣告された囚人が死刑を待つ心境です・・・ハイ。

それともこっちから声をかけて『ヨッ!水も滴るいい男』ってヨイショしておくべき?
それとも百聞は一見にしかずで逃げるが勝ちですか?
きっと跡部君は私の事知らない筈だろうし・・・。
このまま逃げて、ひっそり地味な生活を送り跡部君に会わない様に生活をしても何ら問題も無い気もするんですが・・・。

逃げる?逃げようか?逃げましょう・・・。
よし回れ右でダッシュだ。

まさに方向転換をしようとしたその時。

「おい。」

ぎゃー死刑宣告!!
とっとと逃げておけばよかったかな・・・?

「おい、。」

えっ・・・名前知ってる・・・?
下げていた頭を上げ、おもわず凝視してしまった。

「お前・・・この償いはどうやってとるんだ?」

あぅー、やっぱりタダではすまないみたいです。













私は今、何故だか氷帝レギュラーの部室に居ます。
元はと言えば自分が悪いんですが・・・・。

あの後、跡部君にどうやって責任を取るのかと言われおもわずその濡れたジャージを洗濯します!って言ってしまいました。
そしたら、じゃぁ今すぐ洗えと言われ氷帝の部室に連れて来られた次第です。

噂に聞いていた様にテニス部レギュラーの部室は凄く豪華です。
しかし・・・折角の豪華な部室でもこれじゃ・・・・。

要らぬお節介かもしれないとは思ったりもしましたが、洗濯機を回している間暇なのでこの散乱した部室のお掃除もついでにやってしまいましょうか。

そしたら今部活に勤しんでる跡部君のご機嫌も直るでしょうか?
やっ跡部君が機嫌が悪いのかどうかも微妙な所ですが・・・。
だってずっと終止無表情のままなんですもの・・・。
機嫌が良いのか悪いのか私には判別出来ません(汗)。

ただ、忍足君と向井君が堪え切れず笑い出した時は眉間に皺を寄せてはいましたけど・・・。
流石にちょっとムカついたんでしょうね『外周20週だ』って言い渡してました。

2人にはちょっと気の毒だとは思いますが、少しはこれで跡部君のご機嫌が少し治ればいいなと思ったのは秘密です。
さてと・・・まぁ、掃除は嫌いと言うよりは好きなので恩を売る売らないに関わらずやっちゃいましょう。









「ふぅ・・・掃除する前よりは綺麗になったかな。」

部室にちらばっていたゴミを箒で掃いて、ついでに雑巾もかけておきました。
ちなみに乱雑に押し込められた資料達も一応は背表紙にラベルが張ってあったので、名前順に。
恐らくは取り込んだ洗濯らしき物もたたんで置きました。
一応は臭いを嗅いで洗い立ての匂いがしたので、洗濯後だと判断しました。
別に怪しい人ではありません!
確認の為です。





そんな行動がまさか、後々の私の人生に変化をもたらすとは思いもしませんでした。





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UP.08/01/14