ねぇ、私は貴方と出会えた事、嬉しく思うよ。
最初の頃は、貴方って人がちゃんと解ってなかったから、噂通りに聞く横暴な人かな?って思ってて…ちょっとだけ怖くもあったんだ。
実際横暴な!って思う所も無い訳じゃないけども、でもそれにはちゃんと理由があったんだよね?
あまり多くは語らない貴方…。
だから、中々貴方の優しさに気づく事出来なかった。
でもね、貴方のふっとした優しさに気が付いて貴方に惹かれていくのに時間はそうかからなかった。
願えば叶う奇跡
昨日はとんでも無い事態を引き起こした訳ですが…それがこんな方向へといくとは思ってもいませんでした。
跡部君に水をかけるという大それた事をしてしまい、その結果、償いとして濡れたジャージを洗濯。
ついでに散らかった部室を掃除(そりゃー少しは下心ありましたよ?ご機嫌がホンのちょびっとでも回復してくれれば・・・という下心が)
でもまさか、その余計な行動がこんな事になろうとは思いもしませんでした…。
部活が終わった跡部君達が部室に戻ってきた瞬間。
片付けられた部室を眺めて跡部君が『へぇ〜。』と微妙に関心を示した様なその言葉尻にまさか。
そうまさか、テニス部のマネージャーに就任するとは思いもよりませんでした。
その場を動かずに視線だけで部室を一回り眺めた後、資料のある棚に目を止め少し思案顔をしたと思ったら。
『おい、。』
『は・はい。』
『明日の朝、6時30分にジャージ持ってテニス部正レギュラー部室前に集合。』
と言うと『今日はもう帰っていい。』と言い残し部室の奥の多分あっちはシャワールームがあった方へと消えていきました。
何で明日の朝6時30分?
何でテニス部正レギュラー部室前?
何でジャージ持ってくるの?ってハテナが頭の中にいっぱい。
結局私は、今日の出来事を跡部君に許してもらえたのかどうか解らないまま家に帰宅。
翌日…、昨日跡部君から言われたままの言葉通り正レギュラー部室前にて集合。
だって…下手に逆らえないし、結局私は許してもらえたのかどうかも微妙だし…。
怒らせない事に越した事はないしね…。
来たのちょっと早すぎちゃったかな…。
でもピッタリに来るのもと思って、何をそんなに気合を入れてしまっているのか30分前に到着。
まぁ、朝早いと交通機関も本数が少ないからって言うのもありますけど。
30分も待たなきゃいけないのかー何してようかなー。
なんて考えてると私が到着してから5分も経たないうちに到着した人が。
「よぉ、早いな。」
「あっ、跡部君おはよう。」
6時30分って言うからてっきりそれぐらいにならないと誰も来ないのかと思ってた。
「跡部君も早いね。」
「部長だからな。」
部室の鍵を開けている跡部君に質問。
「所で跡部君。」
「何だ?」
「私は何で、こんな時間にジャージ持参でテニス部に来てるんでしょうかね…?」
「あぁ?そんなの決まってるだろう、マネージャーだからだ。」
「えっ!?私、いつマネージャーになったの??」
そんな話、これっぽっちも私は聞いた覚えがないんですが…?
昨日の件は洗濯をするって事で償ったのでは無いんですか?
しかも、部室の掃除までしたんですよ?
…結局、私は跡部君にお許し願えなかったって事ですか?
「昨日。」
「いや、あのー?そんなに呆気なく言われてもですね?私、そんな事聞いた覚えも無いし言われた覚えも無いんですが…?」
「俺もお前に言った覚えは無いな。」
「あのですね…急にそんな事を言われてもですね…。」
「お前、確か部活何もやって無かったよな?」
「えぇ、まぁ、確かにそうですけど…。」
「だったらいいじゃねぇーか。」
そういう問題じゃないと思うんですが…。
「やっ、あのー。」
「何だ?なんか不都合でもあんのかよ?」
「えーとですね、不都合とかそういう以前にどういう経緯でそうなったんですかね…?それに榊先生の了承とか…。」
「監督には昨日の段階ですでに了承済みだ。…丁度昨日マネージャーが辞めたしな、それにお前の仕事ぶりならマネージャーに適任だと思ったんだよ。」
「はぁ…。」
言ってくれてる事は、私の昨日の行動に感心してくれたみたいだけど。
運動は苦手。
だけど基本的に身体を動かすのは嫌いじゃない。
雑用も結構好きだし…でも、テニス部マネージャー…か。
部活に入らなかった事に関しては、特に意味は無いからマネージャーぐらいだったらやってもいいとは思うけど。
中3になって部活に入っていなかった事に少しだけ後悔もしたし。
今年は中学生活最後の年。
あれよあれよと2年の歳月が流れちゃってて、結局私は何の部活もしてなかった。
マネージャーだから楽でしょうと思ってる訳でもないよ。
大変なのは解ってる。
不都合とか…まぁ、簡潔に言っちゃうと不都合はある。
でも、私がすぐに了承しないのは楽じゃ無いとかそんな所じゃないんだ。
だってテニス部ファンが…ちょっと…ね。
「俺は、昨日のの仕事振りを見て、マネージャーに適任だと思ったんだよ。それに下手に騒がないし気が利くみたいだしな。」
「…お褒めいただき光栄です…。でも…。」
あの跡部君に認められるってちょっとスゴイ!!って思うけど…。
思うんだけど…ね、やっぱり周りが…怖い。
「…お前が躊躇う理由は何だ?納得出来る理由だったら諦めてやるよ。ただ単にやりたくないってだけなら納得出来ねぇーけどな。」
「理由…ですか…。」
テニス部ファンが怖いから…って言う理由だったら納得してくれるかな?
だって私の身の安全の保障は無い訳だし…。
それに私は至って普通の女子です。
何か特別人よりも非の打ち所が無い部分があるわけじゃない。
例えば、綺麗だとか可愛いだとか頭が良いとかスポーツが出来るとかさ…。
そんな部分が一つでも要素があれば、まだ多少のヤッカミも減るとは思う。
女の子ってさ、やっぱり自分より優位な人間に関してはショウガナイってちょっと諦めに入る部分もあると思うんだ。
だけど、自分と大差変わらない…ましてや自分よりも劣ってる人間に対しては優越感じて優位に立つんだよね…。
自分の方が優れてる人間だって…。
だって昨日で辞めたって言うマネージャーの子だって、優れてるものがあった…すっごく可愛いって…。
確か学年は2年生だったかな…?
氷帝でもベスト5に入るぐらい可愛い子だったんだ…。
そんな子の後に私なんかがマネージャーをやったら、かなり非難轟々だと思うんだよね。
でも…。
「ねぇ、跡部君。」
「なんだ?」
「何でマネージャー辞めちゃったの?」
気になったんだよね。
あれだけ可愛かったから、下手に非難する人も居なかったし。
テニス部の部員達も結構手伝ってたし(正・準レギュラーはしてなかったみたいだけど…)
結構、お姫様?扱いされてし彼女にしてみれば、すごく居心地の良い所だと思ったんだけど。
「…ただの飾りのマネージャーなんていらねぇーんだよ。」
「えっ…?」
「、マネージャーって何だ?」
「マネージャー……、簡単に言っちゃえば雑用だよね…?でも、選手の皆に頑張って欲しい少しでも練習時間増やして欲しいって思うから皆の補佐に回って色々と
準備だとか用意だとかして少しでも役に立つ様に頑張るのがマネージャーだと思う…。マネージャーと選手ってやってる事は違うけど同じ仲間だと思うし…、
まぁ他には運動は苦手…でも見てるのが好きで少しでも自分も感じる事が出来たらいいなぁ…とかって私が思うマネージャーってそういうもんだと思ってるけど…?」
「俺は使える奴が欲しい。」
「…はぁ。」
もしかして、以前居た可愛いマネージャーって……使えなかった?
何か微妙に跡部君怒り気味みたいだし…。
そんなに酷かったのかなぁ?
「ちゃんと仕事しねぇ、部員に雑用やらせる色目使うお飾りのマスコットなんていらねぇーんだよ。」
「でも…テニス部って人数多いじゃない?」
「そんな事は解ってるんだよ、限度ってもんがあるだろう!限度ってもんがよ!」
「限度って…。」
「スコアの付け方も解らねぇし覚えようともしねぇ、部室の掃除もしない部日誌も書く事に要点が纏ってない上にただの日記になってる…
仕舞いにはドリンクにタオル準備するのは同学年の2年…で準備出来たドリンクにタオルを配るだけ、これのどこがマネージャーだって言える?」
言えません…ね。
「でも…1年間頑張ってきたんじゃない…の?」
「俺が1年間我慢してやってたんだよ!いつかは心入れ替えてちゃんとやるようになるだろうと思ってな!!でもそれがどうだ?
一向によくならねぇーし、回りもチヤホヤする馬鹿ばっかりだ。俺にも我慢の限界ってーのがあるんだよ、だから昨日付けで辞めさせた。…丁度いいの見つけたしな。」
丁度いいの見つけたって…それってもしかして……私ですか!?
タイミングが悪すぎです。
跡部君に水をかけてしまった時点で、私の運命は悪い方向へと進んでたんすか…?
ハァ…………。
「で?」
「で?って何ですか?」
「お前が躊躇う理由は何だよ?」
生半可な言い訳では断れない雰囲気です…。
跡部君は言う事言うだけあって、ちゃんと行動で示してる人だと思います。
成績は常にトップだし、テニス部部長をやりながら生徒会長まで勤め上げてる凄い人です。
きちんとやっている人に、たかだかテニス部ファンが怖いです、だからヤリタクナイですなんて…言えません。
一応強制的では無いにしろ本来は部活に入らなければなりません。
ですが、特にこれといった部活も無くその内、気が向いたら入ればいいやって安易な考えがこういう結果に結びついてしまったんですかね?
「あー、まぁ、そのやらさせて頂きます。」
このままじゃ、一向に埒があかなさそうだし…跡部君が折れるって事…無いしね。
「当然だな。」
………返す言葉がありません。
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08.01.20 up