最初は、今一納得出来なかったマネージャー就任だったけど…それも今思えばやって良かったって思ってるよ?
でなければ、貴方と関わりあう事も出来なかったし、貴方の事を知る事もなければ好きになる事もなかったから…。


貴方もちょっと?強引にマネージャーに入れた事に対して気にしてたね。
でも私がやって良かったって言った時の貴方のホッとした表情に笑っちゃったね。
悪気なかったんだよ?
結構強引だったわりに気にしてたんだって思うとおかしかったんだよ。


やって良かったって思ったマネージャーだったけど…やっぱ楽しい事ばかりじゃなくて辛い事もあったよ?
あー違う違う、仕事がとかじゃなくて…。









 願えば叶う奇跡









今朝結局断ることが出来ず、見事にテニス部のマネージャーに就任してしまいました。
テニス部のレギュラーは、色々と頑張れよとか頑張って下さいって温かい言葉を頂きました。
が、忍足君と向井君はニヤニヤ顔…、何故か『期待してるからな!』って言われました。
あれですか?私がまた跡部君に対して何かしらやらかすのを期待してるって事ですか……。
まぁ、ともあれレギュラー達は何の問題も無いんですけどね。


ですが、他のテニス部部員の方達は微妙な雰囲気を醸し出してました。
そりゃーそうですよね…以前のマネージャーさんと比べたら天と地との差がある…はちょっと自分が悲しくなってきますけど可愛かったマネージャーが昨日付けで辞めたって
いう上に、代わりに入ってきたのが普通レベルの私ときたらショック大きいでしょう…ね。


申し訳ございません。
謝っても謝りきれませんね…辛い練習の合間の折角の目の保養をなくしてしまいまして…。
目の保養は無理ですが、せめて皆さんの練習が少しでも出来る様に精一杯お手伝いさせて頂きます!


それよりも朝は見学するお嬢様方は殆ど居ないに等しいので、無事過ごす事が出来ましたが…。
問題は放課後です。
金網をずらりと囲むお嬢様方の集団。
左を見ても、右を見てもどこもかしこもお嬢様方です。


そしてとっても痛〜い視線・視線・視線の数々。
私……明日からの学園生活に不安がよぎります。
ハァ………。


おっといけない。
そんな事を考えてる時間じゃなかった。
今は自分の仕事を精一杯やって、少しでもテニス部員皆の役に立つ事をしないと。
やると決めたからには中途半端な事はしたくない。


マネージャーの仕事はやっぱり予測してた様に山のようにある。
跡部君は、一人で200人以上の部員の面倒を見るのは無理があるから、基本的には正レギュラーと準レギュラー中心の雑用をこなしていけばいいって言ってた。
さすがに200人居る全員のフォローは出来ない…っと言うか無理があるのは解ってるけど、でも、やっぱり少しでも役に立ちたいって思う。


今まで2年間無駄に学園生活を送ってた分、今から部活引退までの間に出来る限りの事はしたいって思うんだ。
丁度いい事に氷帝は持ち上がりで、相当悪い成績等を取っていなければ高等部に進学出来ないって事は滅多にない。
今まで部活とかやっていなかった分、成績はまぁまぁ良い点数取ってたし。
少しぐらい下がっても…いいとは言い切れないけど、何にも問題は無い筈。


大人になって過去を振り返った時になんの思い出も無いって悲しいじゃない?
高等部に上がってから部活に入ればいいかも知れないけど、中学生活部活はいつでも入れるなんて考えていた私がこの先部活やる保証なんて有るとも言い切れないし。
それにもしかしたら、別にお金に困っている訳では無いけれどちょっとした興味本位って言うかアルバイトもしてみたいって思ってたから……そんなんじゃ益々部活になんて
入る可能性なんて低いじゃない?


だからこれはいいチャンスだと思ったんだ。
……テニス部って事を除いては……ね。


でもまぁ、あの校内を騒がせているテニス部レギュラーの人達とも天変地異みたいな事が無い限りは知り合う事も無かったと思うし。
それがたまたま運の悪い事に跡部君に水をかけちゃったっていうハプニングでしたが。


周りで騒いでいるテニス部ファン見たくミーハー度が強い訳ではないけれど、そりゃー私だって思春期まっさかりの花の乙女ですから…カッコイイ人達と多少なれとも
お知り合いになりたいって思う部分ほんのちょっびっとはあるんだよね。
目の保養になるしね…。


別に付き合いたいとかそいった事は無いよ。
恐れ多いじゃない?一般ピープルの私と200人以上いる強豪氷帝の正レギュラーとなんて…ね。
それに彼らの内面性を知った訳じゃないから。
憧れの部分はあってもそれが恋愛感情には私は結びつかない。
顔が良い事には越した事はないかもしれないけど、私の場合は顔よりもやっぱりその人の内面性で好きになる。


って私がいくら心の中でこんな事を思ってても周りのテニス部ファンのお嬢様方は理解してくれないんだろうな……。
明日からが怖い……。







でもまさか、お嬢様方よりも先に初日からこんな事が起きるとは思わなかった…。


最初は気のせいかと思ったんだ。
それに全然テニス部の事解ってなかったし、私の注意力が足りないんだと思ってた。
だから最初の2・3日は気にしてなかったんだ…。









誰かの『危ない!!』って叫び声が聞こえたと思った瞬間にガツンΣっと衝撃と痛み。
「っぅ…。」


あまりの衝撃と痛みに声も出なくて。
背中に走った激痛で一瞬呼吸も出来なかった。


衝撃で折角カゴの中に集めたボールたちは、私の手から零れ落ちて周りに散らばってる。
転ぶのは間逃れたにせよ、背中の激痛でしゃがみ込んでしまった。


「…ハァ……ハ…ァ…ッ。」


「大丈夫ですか?」


うつ伏せた顔を見上げてみればそこには。
「鳳君…?」
「はい!それよりも先輩大丈夫ですか?」
丁度近くに居たらしい鳳君が私を心配して駆け寄ってきてくれた。
「…うん……大丈夫だよ。」


ここで蹲ってる暇は無し、鳳君の一言で周りがざわめき始めたし。
これじゃ折角の練習時間を減らしてしまう。
本当はかなりきつい状態だけど…。


「鳳君…私大丈夫だから部活戻って。」
「でも先輩…。」
「大丈夫だから…ね?部活戻って。」


立ち上がるのキツイけど、大丈夫って意思表示を見せないと納得してくれないなって思ったから無理して立とうとしたけど。


「っう…。」


いくら足では無いにしろ体を動かすって事は体の筋肉を使うってわけで背中に激痛が走った。
あまりの激痛に立ちくらみが起きる。
フラッとまたしゃがみ込みそうになった私の腕を誰かが掴んで支えてくれた。


あっ…この香り。


「おい大丈夫か?」
「あ…とべ君?」
「あぁ。」


「おい鳳。」
「はい。」
「こいつに当たったボールを打った奴は誰だ。」
「………すいません、そこまでは見てません。ただ凄い音がしたんで振り返ってみてみたら先輩が蹲ってカゴ転がってて…。」
「そうか…お前は練習に戻れ。」
「ですが…。」
「大丈夫だ、こいつは俺が保健室に連れて行く。」
「はい。」


『それじゃ、すみません』って言って鳳君は練習に戻って行った。


「おい、大丈夫か?」
「うん…何とか。」


相変わらず跡部君に支えてもらってる状態だ。
周りからキャーキャーと悲鳴が聞こえる。
この体制もヤバイな…。


「跡部君…私大丈夫だから部活戻って?ね?それにちらばったボール片付けないと…。」
「馬鹿かてめぇーは!」


馬鹿って…。


「そこは取りあえずいい、先に手当てが先だ。」
「でも…。」
「黙れ。……樺地。」
「ウス。」


いつの間にか側には樺地君が。


「ボール集めておけ。」
「ウス。」
「オイ、。」
「…はい。」
「お前は俺と保健室に行くぞ。」


私の意見は最早聞き入れてくれない状態だ。
ここで私が渋ってて埒なんて明かないし、今だこちらの様子をチラチラと伺っている部員達の士気もそらしてしまってる。


「樺地君ごめんね…。」
「ウス、それよりも早く保健室行ってください。」
「ありがとう。」
「ウス。」


樺地君にお礼を言った後そのまま跡部君に支えられながら保健室へと向かった。




尋ねて開けてみれば保健室には誰も居なかった。


「「………………。」」
「チッ。」


舌打ち!?


手当てしようにも保険医はどこにも見当たらない。
さてどうしましょう…?
ここは一先ず自分でするしかない。


当たり前でしょう?
幾らなんでも背中って服を脱がなきゃいけない訳で…。
まさか男の跡部君に頼む訳にもいかない。
頼みの綱だった保険医はどこに行ったのやら見当たらないし。


「あ・跡部君、私自分でやるから部活に戻って…下さい。」
「…………背中でどうやって自分で手当てが出来るんだよ。」
「やっ、あの、でも……。」


そうは言ってもどうするんですか?
まさか……………。


「俺が手当てする。」


ひぃ−−−−−−−それはマズイっすよぉ。
一応これでも私は女子です。


「さすがにそれは……。」
「誰も下着まで脱げとは言ってねぇーだろう。」
「そういう事じゃなくてですね…。」


その下着さえ見られるのが恥ずかしいんですってば。
勘弁してください。


「ゴチャゴチャうるせぇな。」


ドサッ「うぐっ」。
何て事でしょう…保健室の硬いベットにほおり投げられました…。
うつ伏せの私の上に馬乗りで跡部君が乗りかかってます。


「暴れるなよ?」


耳元で囁かないで下さい……。
勘弁してくださいよ。


服をめ・めくりあげてます。


ビクッ「っぅ。」
丁度右の肩甲骨の辺りに跡部君の指が…。


「チッ、紫になってやがる。」


あぁ、やっぱり痣になっちゃってますか…。


「おい。」
「は・はい。」
「そのまま動くなよ。」
「へ?」


私の上から降りると薬品棚の方へと歩いて行きました。
シップでも取りにいってるのかな?


ビリビリって音がした後にヒンヤリと冷たい感触。
「ひゃっ。」
思わず声が出ちゃいました。


「取りあえずシップで応急処置しておくが、念の為病院に行くぞ。」
「大丈夫だよ!!そこまで酷くないし。」
「馬鹿かお前は、硬いボールが何十キロ・何百キロっていう速さでしかも骨に当たってるんだぞ!下手したら骨にヒビが入ってるかもしれねぇーだろが。」
「………。」
「オラ行くぞ。」
「私一人で行くから、跡部君部活戻って下さい。」
「あ?」
「練習時間減っちゃうし…部長が抜け出しちゃったりしたら…。」
「俺が少しぐらい練習しなくたって支障なんて出る訳ねぇーだろうが、それに俺が抜けても何の問題もねぇーよ。」
「でも……。」
「しかも、今日はそろそろ監督が出てくる時間だ。だから何も気にする事はねぇーよ。」


私、初日から何やっちゃってるんだろう。
やるって決めたからにはちゃんとやろうって…頑張ろうって決めてたのに…。
自分の不注意で…跡部君に迷惑かけちゃって。
しかも、怪我しちゃうし……打ち身だけだと思うけど。


「ごめんね、跡部君。」
「何がだよ。」
「私の不注意で跡部君に迷惑かけちゃって。」
「迷惑なんてかかってねぇーし、お前の不注意だけが原因じゃねぇーよ。」
「えっ?」
「いいから行くぞ。」


この時はあまり意識してなかったけど、この後に跡部君の言葉の意味が徐々に理解出来る様になる。
今ではそんな事はもう無いけれど、でもやっぱりこの当時は色々とキツカッタ。






コメント:
まだ終わりそうな気配が全然ありません(汗。
私のやる気と気力が続けば、10話ぐらいいきそうです。
(08/02/11.UP)



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